仏教用語。濁とは濁(にご)り、穢(けが)れのこと。五つの穢れとは、劫濁(こうじょく)、見濁(けんじょく)、煩悩濁(ぼんのうじょく)、衆生濁(しゅじょうじょく)、命濁(みょうじょく)をいう。
(1)劫濁は時代の濁りで、戦争、疫病、飢饉(ききん)などの時代的な環境社会の穢れをいう。
(2)見濁は思想の乱れで、種々の邪悪な思想が流行することをいう。
(3)煩悩濁は煩悩の流行をいう。貪(むさぼ)りや怒りや世間知らずな迷いなどがはびこり、人心は乱れ、悪徳の横行する世相をいう。
(4)衆生濁は人間の善行意欲が低下し、心に活気がなく、不健康で、苦労の多い世間となり、同時に人間の質の低下をみる状態をいう。
(5)命濁は人間の寿命が短くなることをいい、最後には寿命は10歳にまで縮まる。
総じて五濁は、末世において発生する避けがたい社会的、精神的、生理的な5種の穢れで、五滓(ごし)ともいう。
[田上太秀]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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