五濁(読み)ゴジョク

デジタル大辞泉 「五濁」の意味・読み・例文・類語

ご‐じょく〔‐ヂヨク〕【五濁】

仏語。この世が悪くなるときの五つ汚濁の相。天災疫病戦争などが起こるこう濁、誤った考え方がはびこる見濁、衆生しゅじょう寿命が短くなるみょう濁、煩悩によって悪が蔓延する煩悩濁衆生資質果報が低下劣悪となる衆生濁。五つの濁り。

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精選版 日本国語大辞典 「五濁」の意味・読み・例文・類語

ご‐じょく‥ヂョク【五濁】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。世の中の五つの汚濁。劫濁(こうじょく)(天災、地変の起こること)、見濁(衆生が悪い見解を起こすこと)、命濁(衆生が短命になること)、煩悩濁(ぼんのうじょく)(衆生の煩悩が盛んなこと)、衆生濁(しゅじょうじょく)(衆生の果報が衰えること)の五種。五つのにごり。五濁のにごり。〔法華義疏(7C前)〕
    1. [初出の実例]「流れ久しき世々までも、五濁の人間を導きて、済度の船をも寄するなる」(出典:謡曲・弱法師(1429頃))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五濁」の意味・わかりやすい解説

五濁
ごじょく

仏教用語。濁とは濁(にご)り、穢(けが)れのこと。五つの穢れとは、劫濁(こうじょく)、見濁(けんじょく)、煩悩濁(ぼんのうじょく)、衆生濁(しゅじょうじょく)、命濁(みょうじょく)をいう。

(1)劫濁は時代の濁りで、戦争、疫病、飢饉(ききん)などの時代的な環境社会の穢れをいう。

(2)見濁は思想の乱れで、種々の邪悪な思想が流行することをいう。

(3)煩悩濁は煩悩の流行をいう。貪(むさぼ)りや怒りや世間知らずな迷いなどがはびこり、人心は乱れ、悪徳の横行する世相をいう。

(4)衆生濁は人間の善行意欲が低下し、心に活気がなく、不健康で、苦労の多い世間となり、同時に人間の質の低下をみる状態をいう。

(5)命濁は人間の寿命が短くなることをいい、最後には寿命は10歳にまで縮まる。

 総じて五濁は、末世において発生する避けがたい社会的、精神的、生理的な5種の穢れで、五滓(ごし)ともいう。

[田上太秀]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五濁」の意味・わかりやすい解説

五濁
ごじょく
pañca kaṣāya

仏教の世界観を表わす用語。世界の存続期間中,世の中のけがれゆくさまを5つに分類したもの。まず人間の寿命が短くなり (寿濁) ,時代的な環境が腐敗し (劫濁) ,煩悩が盛んとなり (煩悩濁) ,思想が混乱をきたし (見濁) ,人間の肉体,精神とも貧相,無気力になる (有情濁) という5つの段階を経て世の中が衰微すると考えられた。

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