京都でつくられる和菓子。生(なま)菓子、干(ひ)菓子とも上菓子をとくに京菓子とよぶ。京菓子の特殊性は地域と環境に培われた。1000年余にわたる王城の地であり、貴族社会が構成された京都には、高級菓子をはぐくむ土壌があった。また神社仏閣も多く、貴族とのつながりから儀式用、供物(くもつ)用の菓子が発達した。加えて茶道の興隆が雪月花の風韻を楽しむ菓子を育成した。風光に恵まれ、諸国物産の集積した土地柄は、京の庶民にも優れた美意識を身につけさせ、その「美」のなかの菓子をつくりだしていったのである。京菓子といえるものは生菓子、干菓子を問わず、見て美しく、季節感あふれ、美味ながら喫茶の脇役(わきやく)である茶の子の分をわきまえていなければならない。上菓子を手がける菓匠の細やかな配慮もそこに集中されてきた。粽(ちまき)の名家川端道喜(どうき)の商法は、「正直」「量産しない(手作り)」「声なくして人を呼ぶ」であった。これは京菓子司すべてに通ずる信条である。
[沢 史生]
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
… 江戸時代に入って元禄(1688‐1704)ころまでに,菓子はめざましい発展をみせたようである。大田南畝はその著《一話一言》に天和3年(1683)12月19日の日付をもつ江戸日本橋本町の京菓子司桔梗屋河内大掾の菓子目録を収載しているが,それにはまんじゅう,ようかんをはじめとして総計172種の名が挙げられている。この急激な多様化の原因として考えられるのは,まず室町時代には見られなかった落雁(らくがん)類やぎゅうひ,それに南蛮菓子といった新しいレパートリーが加わったことが挙げられる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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