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人買 ひとかい

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世界大百科事典 第2版の解説

ひとかい【人買】

人身売買を業とする者,人商人(ひとあきびと)。朝廷は,1178年(治承2)以降,人を勾引して売る者が京畿に充満すると述べ,その拘禁をくりかえし諸国に命じたが,鎌倉幕府も97年(建久8)以降朝廷法をうけて人売買の禁止をくりかえした。人を誘拐し辺境地域に売る人商人の横行がひどくなり,社会不安となったのである。鎌倉幕府はその禁制を厳にし,人商人にはその面に火印をおし,さらに盗賊に準じて断罪することになる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人買
ひとかい

人身を買い取り転売して利を得る行為または行為者のこと。実際には誘拐することが多く、その場合も含む。その意味で、人勾引(ひとかどい)(誘拐者)の「ど」の音が略されて「ひとかい」と発音するようになったとの説もある。しかし、「ひとかい」の語の初期の例では、すべて勾引(こういん)者とは区別されており、かならずしもこの説を支持できない。
 誘拐行為は時代により表現・違法性の度合いも異なるし、また人身売買の語のさす内容も時代により異なる。古代律令(りつりょう)制では、誘拐行為を「人ヲ略ス」、そのうえで売ることを「人ヲ略売ス」と称し、遠流(おんる)の刑としている(養老(ようろう)賊盗律)。それが本人の同意のうえならば「和誘」と称し、刑も一等を減じている。平安後期以降中世には、誘拐は一般的には「勾引」(こういん、かどい、かどわかし)と称するようになり、「子取り」の語も現れてくる。誘拐した人身を売る行為を「人売り」と称し、それを買い取り転売する業に従事する者は一般的には「人商人(ひとあきびと)」または「売買仲人(なこうど)」とよばれた。中世になってこのことばが定着した背景には、人身売買事業が恒常化し組織的に行われるようになってきたことと、さらに一般的には、諸貢租の重圧や飢饉(ききん)などにより貧しい庶民の子女の売られる場合が多かったことがある。鎌倉幕府や朝廷は、人身売買・勾引行為を禁制し、ときに「人勾引」を行う者や「人商」の輩(ともがら)に対して顔面火印の刑で臨むこともあった。しかし14世紀に入ると売買を目的とした勾引行為については、「盗犯に准ず」(追加法)としているように、その盗犯行為のみが問題にされるようになった。中世にあっては下人(げにん)など奴隷が逃亡することも主人の側からは「人勾引」と称されているが、このことは人間が財産視され、それを不法に奪う場合のみ「人勾引」としてその違法性が問題となったと理解すべきである。「人買」の語は室町期には「人買船」などとして現れるが、一般化するのは近世初頭以降である。江戸時代では、奴隷身分と人身売買が基本的には否定され、幕府は勾引行為を死罪をもって厳禁したため、「人買」の語は一般的にはむしろ合法的な年季奉公人としての遊女に売る者などをさし、貧しい庶民の側からは「女衒(ぜげん)」などと同一存在とみられた。
 近代以降においても、厳密な意味では、人身売買は厳禁されていたが、前借金により労働者の人身に強度の拘束を行う場合があった。もっとも多かったのが、貧しさから女子が娼妓(しょうぎ)にされる場合であり、その際仲介業者や債権者を「人買」とよぶこともあった。このような行為に対して、政府は1872年(明治5)の太政官(だじょうかん)布告で禁止の立場を示していたが、実質的にはその後も半合法的に存続し続けることになった。また日本資本主義の底辺を担った紡績・製糸業に従事する女工も貧困な農村から前借金などによって集められることが多く、その募集にあたった業者も「人買」とよばれることがあった。このような労働者の存在は、新憲法で基本的人権の尊重が掲げられ、労働基準法で労働者の権利が確立され初めて一掃された。[磯貝富士男]
『牧英正著『日本法史における人身売買の研究』(1961・有斐閣) ▽牧英正著『人身売買』(岩波新書)』

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世界大百科事典内の人買の言及

【女衒】より

…芸娼妓周旋人のこと。遊女の周旋は中世では〈人買い〉がこれを行い,江戸時代には〈人買い〉〈口入れ〉〈桂(慶)庵(けいあん)〉などとよぶ周旋業者がこれを兼ねたが,とくに娼妓を周旋する者を関東では女衒と俗称することがあった。生業上,女の姿形を見ることから〈女見(じよけん)〉といい,それがなまったものというが,確証はない。…

※「人買」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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