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嬰児殺し えいじごろしinfanticide

翻訳|infanticide

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

嬰児殺し
えいじごろし
infanticide

出生時,あるいは出生後すぐに嬰児を殺す習俗で,経済的,宗教的その他の理由で行われる。 J.マクレナンは南インドトダ族の幼女嬰殺を取上げ,食糧獲得困難のための人口制限を理由として考えた。きびしい環境にいる極地エスキモーの間でも養えない場合には幼児を殺した。人口密度の高いポリネシアにも同様の慣習があった。アフリカでは不法な婚姻,異常な出産を理由に子供を殺すことがあった。双生児の出生は呪術=宗教的に好ましくないとみられ,その一方あるいは双方を殺すのは世界各地に例がある。旧約聖書には初生児が犠牲に供される記事があるが,ニューギニアでは現実に初生児殺しが観察されている。

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デジタル大辞泉の解説

えいじごろし【嬰児殺し】

山本有三の戯曲。一幕。大正9年(1920)発表。生活苦から嬰児を絞殺した女土工と、それに同情しながらも彼女を連行する巡査を通じ、社会の矛盾をついたもの。

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百科事典マイペディアの解説

嬰児殺し【えいじごろし】

分娩(ぶんべん)の際または直後に嬰児を殺す行為。歴史的に,非嫡出子の法的社会的地位と関連して,特別に減軽規定を置く例が多い。日本の現行刑法は特別規定おかず殺人罪に含めるが,情状を酌量し刑を軽減され,執行猶予が認められることが多い。

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世界大百科事典 第2版の解説

えいじごろし【嬰児殺し infanticide】

新生児を殺害すること。嬰児殺(さつ)ともいう。
[法律]
 刑法上では,とくに出産中または出産の直後に母親が嬰児を殺害する場合をいう。この場合も殺人罪の一類型であるが,女性犯罪の典型といわれ,妊娠・出産に至る事情(たとえば,不倫な関係から生じた子や私生児など),出産時の精神状態などを考慮して,一般の殺人罪と区別して,比較的軽い刑を特別に規定している国が多い(フランスドイツオーストリアなど)。ただし,いずれの場合も減軽の対象は母親のみであり,それ以外の者の行為は通常の殺人罪となる。

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大辞林 第三版の解説

えいじごろし【嬰児殺し】

戯曲。一幕。山本有三作。1920年(大正9)発表、翌年有楽座で初演。貧困のため嬰児を殺した女土工と、同情しながらも彼女を連行する巡査を通して、貧困から起こる社会悪の問題を提起した作品。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

嬰児殺し
えいじごろし

誕生直後に赤ん坊を殺すことであるが、通常、親か親と直接に関係のある者によって殺害がなされた場合をさす。嬰児殺しはあらゆる時代を通じ、また「未開」と「文明」を問わず存在する現象であるが、「未開」の場合はその文化のなかで認められた行為であるのに対し、文明社会においては犯罪として扱われることが多い。嬰児殺しの理由を推し測ることはむずかしいが、次のように大きく三つに分けることができよう。(1)食糧不足、厳しい風土などの環境上の問題、(2)双生児の一方か両方を殺すことにみられる象徴的・認識的問題、(3)子供の形態異常や親の心身の不安定などの親か子に原因がある場合、である。
 人類学的に有名な例としては、エスキモーの女児殺し、インドのトダ人の女児殺しがあり、いずれもそれらの社会の生態系や婚姻システムと密接に関連しているとされる。また双生児は、人間の子は本来1人ずつ生まれるという前提を混乱させるものであり、その認識上の問題を解決するために嬰児殺しが行われると考えられる。文明社会における嬰児殺しは、親子心中や虐待、死体遺棄として取り上げられ、処罰の対象とされているが、いわゆる未開社会においても、近代社会の考え方が入り込むにつれ、嬰児殺しは罪と意識されるようになってきている。[松岡悦子]

刑法上の嬰児殺

刑法上は嬰児殺(えいじさつ)といい、分娩(ぶんべん)中または分娩直後の新生児を殺害すること。嬰児殺に関する立法例には、古くは、嬰児殺が無抵抗の嬰児を殺害するものであるから重く処罰されるべきであるという考え方(カロリナ法典)があったが、今日ではむしろ逆に、嬰児殺を普通の殺人と区別して、これを軽く処罰する例が多い。その理由には、出産時における母親の特殊な精神状態のもとで犯されることが多いことや、非嫡出子出産により名誉が傷つけられることを防ぐために犯される場合があること、などがあげられている。
 諸外国の刑法には嬰児殺の規定を設けているところが多いが、日本の刑法は嬰児殺と普通殺とを区別していない。したがって、嬰児殺しは、「出生」の前・後により、出生前であれば堕胎罪(刑法212条以下)、出生後であれば殺人罪(刑法199条)が成立することになる。なお、「出生」の時期については争いがあり、陣痛説、一部露出説、全部露出説、独立呼吸説などがあるが、一部露出説とよばれる通説・判例の立場によれば、嬰児殺のうち、嬰児が完全に母体内にある場合には堕胎罪にとどまるが、母体外に一部でも露出した嬰児を殺害する場合は殺人罪になる(なお、嬰児殺の規定を設けている国では、嬰児について陣痛説が一般的に採用される)。ただし、日本では、殺人罪には幅広い法定刑が規定されているから、嬰児殺が殺人罪にあたる場合にも、先に述べたような同情すべき事情が認められるならば、その情状を考慮して刑を量定すればよいであろう。[名和鐵郎]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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世界大百科事典内の嬰児殺しの言及

【殺人罪】より

…強盗殺人罪(240条)のほか,爆発物取締罰則1条,〈暴力行為等処罰ニ関スル法律〉3条,〈決闘罪ニ関スル件〉3条,〈人質による強要行為等の処罰に関する法律〉3条,破壊活動防止法4条,39条等に特則がある。外国立法例には殺人を謀殺と故殺とに区別し,さらに客体,方法等で尊属殺,嬰児殺しや毒殺等をも区別して,それぞれに応じた法定刑の加減等をしているものも多いが,日本の刑法は,尊属殺を除いて,このような区別を原則としてせず,きわめて幅の広い法定刑を定め,裁判官の裁量によって対応することとしている。 殺人罪は人の生命を保護法益とする罪で,最も古くからその犯罪性を異論なく認められてきたものであるが,医学的・技術的進歩等に伴い,その外延は必ずしも明らかではなくなってきている。…

【堕胎】より

…中世初期のヨーロッパ社会でサビナJuniperus sabina(ヒノキ科)が堕胎薬として乱用されたことや,江戸時代の日本で多くの堕胎専門医が活躍し,種々の堕胎薬が売られたのは,口減らしの目的もさることながら,前者はとくに宗教倫理のうえから,後者は家制度の発達とそれに伴う社会倫理のうえから,私生児の存在を否定したことと関連している。 子を得ないための方法には,大きく分けて避妊,堕胎,嬰児殺し(間引き)の三つがある。これらの間にどのような違いを認めるのか,またその結果としてどの方法を選択するのかは,性交,妊娠,出産,胎児,新生児に対して,その社会のもつ道徳的あるいは生理的な認識に左右され,またそれぞれの社会,階層の経済状態に大きく影響される。…

※「嬰児殺し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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