伝書鳩(読み)デンショバト(英語表記)homing pigeon

翻訳|homing pigeon

デジタル大辞泉 「伝書鳩」の意味・読み・例文・類語

でんしょ‐ばと【伝書×鳩】

遠隔地からの通信に利用するドバト。鳩の帰巣性を利用したもので、かつては軍隊・新聞社などで用いたが、現在ではレース用。
[類語]家鳩土鳩山鳩雉鳩河原鳩烏鳩青鳩

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精選版 日本国語大辞典 「伝書鳩」の意味・読み・例文・類語

でんしょ‐ばと【伝書鳩】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ドバトの改良種で、訓練して通信に利用する鳩。原種カワラバトとされ、その帰巣本能を利用したもので、実用通信距離は約二〇〇キロメートル。新聞社などの通信用のほか軍事用としても使われたが、現在では鳩レースなどに利用されている。レース鳩
    1. [初出の実例]「軍事上に伝書鳩を使用することは広く世間に行はれ」(出典:高知日報‐明治二一年(1888)八月七日)
  3. 毎日、会社が終わると、寄り道をしないでまっすぐに家に帰る男のたとえ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伝書鳩」の意味・わかりやすい解説

伝書鳩
でんしょばと
homing pigeon
carrier pigeon

鳥綱ハト目ハト科のカワラバトColumba liviaをいろいろな目的のために家禽(かきん)化したものを一般にドバト(堂鳩)とよび、そのうち、方向感覚に優れ、長距離の飛行に耐える性質を改良して通信に利用する系統を伝書鳩という。第二次世界大戦直後までは軍用鳩ともいったが、1950年代以後は、有線および無線通信技術の発達によって実用的な意義はほとんどなくなり、おもに競技用に飼われるので、レース鳩racing pigeonということが多い。

 初め中近東で飼いならされ、紀元前3000年ごろには、エジプトで漁船から漁況を知らせる通信に利用された記録がある。古代オリンピックが開催されるときには、ギリシアの各都市が用意して、競技の勝者の速報を入手した。ローマ帝国は、軍の連絡用に盛んに使った。普仏(ふふつ)戦争(1870~1871)ではフランス軍の360羽によって、延べ15万以上の通信が運ばれた。第二次世界大戦では、連合軍側が各地のレジスタンスパラシュートで1万7000羽を送り込み、およそ2000羽が、通信をもたらした。足または背に軽量の筒を取り付け、その中に通信文や写真などを入れるのが普通であるが、普仏戦争では、通信文を書いた薄い布を尾羽に結び付ける方法を用いた。

 巣、雛(ひな)およびつがいに執着して帰る性質を利用するのであるが、餌(えさ)を与える場所を別に決めてやると、その場所と巣の往復に利用できる。方向の定位は、近距離では地形や塔など目標物の記憶に頼り、遠距離では太陽などを目標とする天体航法、悪天候のときには地磁気によるコンパス航法も使う。国内のレースは、日本伝書鳩協会日本鳩レース協会によって主催され、100~1500キロメートルまで各種ある。

[竹下信雄]

飼い方

鳩舎(きゅうしゃ)は見晴らしのよい場所に設け、金網張りの部分を大きくとる。若鳥の場合は一度も舎外で飛んでいないものを求め、成鳥の場合は雛をかえさせるまで舎内で飼う。飼料は、トウモロコシコムギ、アサの実などからなる配合餌料(じりょう)を1日35~40グラム、塩土、水、青菜を与える。石膏(せっこう)製の皿巣を置くと、小枝を積んで産座とし、2卵を産む。雌が18日間抱卵し、雛は雌雄が鳩の乳(嗉嚢(そのう)の内壁が肥厚してはげ落ちたものが主成分である)を口移しに与えて育てる。約20日間で巣立ちし、3か月で成熟する。

[竹下信雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「伝書鳩」の意味・わかりやすい解説

伝書バト(鳩) (でんしょばと)
homing pigeon
carrier pigeon

鳥綱ハト目ハト科のカワラバトColumba liviaが,方向感覚,帰巣性に優れ,長距離飛行の能力が高く,また飼養が容易なことに着目して,通信に利用するため家禽(かきん)化したものをいう。第2次世界大戦直後までは軍用に多用されたので軍用鳩とも呼ばれた。しかし無線などの通信技術の発達により,しだいに実用上の意義を失った。新聞社による写真フィルム運搬には最後まで利用されたが,1950年代以降はおもに愛好者の競技用に飼われ,レース鳩racing pigeonということが多い。遠方に運ばれたハトは,自分の巣や雛,つがいの相手に対する強い執着のために帰巣する。通信に用いる場合は,脚か背に軽量の筒をつけ,その中に通信文などを入れて運ばせる。

 歴史は古く,前3000年ころ,エジプトの漁船が漁況を港に知らせるために利用した記録があり,中近東ではそれ以前から使われていたらしい。古代オリンピックの優勝者を知らせるためにギリシアの各ポリスが用い,またローマ帝国は軍隊の通信用に多用した。第2次大戦では,連合軍側が渡洋攻撃をする爆撃機に積み,ハトが戻ると機が不時着したものとして乗員の捜索を始めたり,パラシュートで降下させてレジスタンスからの送信に利用したり,大いに活用した。

 東京に日本伝書鳩協会と日本鳩レース協会があり,100~1500kmの各種のレースを主催している。
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百科事典マイペディア 「伝書鳩」の意味・わかりやすい解説

伝書バト【でんしょバト】

カワラバトを改良したハトの一品種。翼長23cm。帰巣性にすぐれるため,古くから通信用に用いられた。古代エジプトや古代ギリシアですでに使われたといわれ,現在のものはベルギーなどヨーロッパで改良された。日本には19世紀末に軍用バトとして輸入された。現在は実用に使われることは少なくなったが,レースは盛んに行われている。
→関連項目ハト(鳩)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「伝書鳩」の解説

伝書鳩 (デンショバト)

学名:Columba livia var.domestica
動物。ハト科の鳥

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世界大百科事典(旧版)内の伝書鳩の言及

【駅伝制】より

…9~10世紀のアラブの地理書によれば,これらの駅舎は全国で930余を数えたという。交通手段として一般にイランではラバが,西方のアラブ地域ではラクダが用いられ,危急の場合には馬や伝書バトが利用された。これらの施設の使用は公的な任務を帯びる者に限られたが,バリード網の整備は旅の安全性を高め,民間の商業活動を促進する大きな要因となった。…

※「伝書鳩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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