陽明学の祖、王陽明(守仁(しゅじん))の門人との問答および論学の書翰(しょかん)を集録した書。現行三巻。陽明思想の中核をよく表す。現行の形態になったのは、1572年(隆慶6)『王文成公全書』に収録されて以降である。上巻語録は徐愛(じょあい)ら門人による記録で、陽明47歳(1518)のとき、彼の親覧を経て出版されたもの。心即理、知行合一(ちこうごういつ)など、陽明41~47歳ごろの思想を伝える。中巻の書翰は南大吉(なんだいきつ)の編纂(へんさん)したものを銭徳洪(せんとくこう)が削除訂正を加え、自ら編纂した下巻語録とともに刊行したもの。それらが『王文成公全書』に収録される際に、三巻に配当されたのである。中・下巻は陽明死後に編纂されたもので、陽明の手は加わっていない。致良知(ちりょうち)などおもに晩年に確立された思想が展開されている。
[杉山寛行]
『溝口雄三訳『伝習録』(『世界の名著 続4 朱子/王陽明』所収・1974・中央公論社)』
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