体源鈔(読み)たいげんしょう

精選版 日本国語大辞典 「体源鈔」の意味・読み・例文・類語

たいげんしょうタイゲンセウ【体源鈔】

  1. 室町時代の音楽書。一三巻二〇冊。豊原統秋(むねあき)著。永正九年(一五一二成立。「続教訓抄」などをうけ、雅楽とその周辺の諸事項につき、諸書を博捜して述べたもの。内容は、楽律調子楽器舞曲・諸楽家の系譜の他各方面にわたり、説話を多く含む。

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改訂新版 世界大百科事典 「体源鈔」の意味・わかりやすい解説

体源鈔 (たいげんしょう)

音楽書。京都方(京方)楽人豊原統秋(とよはらのむねあき)(1450-1524)編集。1512年(永正9)成立。ただし第3・10・11巻に永正13年10月24日を最終日付とする加筆7項が認められる。13巻。雅楽全般についてまとめた総合音楽書で,《教訓抄》《続教訓抄》を継ぎ,《楽家録》に影響を与えた。内容は諸本によって繁簡の差があり,順序・構成等必ずしも同じではないが,古典全集本に拠れば豊原氏の家業とする笙の事に始まり,楽律,調子,楽器類,舞楽,歌謡,御遊(ぎよゆう),神楽,管絃作法,稽古(けいこ),上演例,名人,楽家系図等の事が785項に分記されている。説明は典拠重視で進められ,有名楽人の口伝・記録はもとより,引用文献は《詩経》《白虎通義》《唐書礼楽志》《源氏物語》《本朝書籍目録》等漢籍や物語・史書と,楽書にとどまらず多岐にわたり,書名のあがっているものだけでも160を超える。《神楽・催馬楽注秘抄》全文の引用等他書の研究に資する部分も少なくない。序に応仁の乱(1467-77)後の混乱に触れ,楽道廃忘の危機にこれを書き残す旨を記す統秋の意図は,十分かなえられているといえよう。《楽家録》に比して雑駁(ざつぱく)な印象は免れないが,その作者安倍季尚が本書に拠ったことは,季尚書写抄本系の《体源抄》が存していることから間違いはなく,その3巻首には書名について〈或人ノ云ク豊原骨水(こつすい)ノ抄タルヲ以テ名付之云云〉と見え,《体(体)源鈔》の名は豊原の文字に基づいて作ったとする。活字翻刻は《日本古典全集》に所収。
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