債務者が契約に違反したとき債権者に対して支払う一種の制裁金。契約に違反したら一定金額を支払うという形態と,契約に違反したら契約を履行するまでの間一定期間ごとに(たとえば1日につき)一定金額を支払うという形態とがある。契約に違反したとき債務者がその支払義務を負うかどうか,またいくら支払うべきかということは,いずれも債権者・債務者間の事前の約束によって定まるものであって,法律上当然にその支払義務が生ずるものではない。この点で同じく契約違反に関連して支払われるものではあるが,損害賠償義務が法律上当然に発生するものであることと対比される。違約金を定める目的は債務者に経済的な不利益を課すことによって債務の履行を確実にすることにあるが,それとならんで〈損害賠償額の予定〉の目的で定められることが多い。損害賠償額の算定は種々の要素を考慮して行われるため,金額に関して紛争を生ずることが少なくない。そこであらかじめ損害賠償額を違約金として一定の金額にて定めることによって,そのような紛争を回避することが可能となる。民法は,違約金が原則としてこのような損害賠償額の予定としての性質を有していると推定している(民法420条3項)。利息制限法でも,違約金を賠償額の予定とみなしており,違約金を支払う旨の約束をした場合には,同法に定められた最高利率の倍額までは有効とされているが,それ以上は約束をしても請求する権利はない(利息制限法4条)。
執筆者:栗田 哲男
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契約で定めた義務を履行できなくなったり、履行が遅れたりした場合に、相手方に支払うことをあらかじめ約束した金額をいう。違約金は漠然とした概念で、場合によって、債務が履行されない場合に損害賠償とは別に制裁金として支払われるものであったり、損害賠償額の予定であったり、あるいは損害賠償額の最低額を決めるものであったりするので、具体的な場合に応じて、そのうちのどれに相当するかを判断しなければならない。現行民法では、違約金を損害賠償額の予定であると推定している(民法420条3項)ので、債務の不履行が不可抗力によって生じた場合でも、また実際の損害額が違約金より多くても少なくても、予定された賠償額を請求できることになる。したがって、賠償額の予定以外の趣旨であることを主張する者は、これを立証しなくてはならない。金銭の消費貸借についての違約金は、利息制限法に定められた利率の1.46倍を超えることはできない(4条)。
なお、手付金を渡した者が債務を履行しない場合には、これを受け取った者が没収してもよいという約束の手付を違約手付という。このうち、債務不履行の場合には当然没収され、債務不履行による損害賠償を別に請求することができる違約手付を、違約罰という。しかし、日本ではこの種の手付は少なく、損害賠償額の予定の性質をもつ手付(賠償額の予定としての違約手付)であることが多い。
[高橋康之・野澤正充]
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