改訂新版 世界大百科事典 「備讃諸島」の意味・わかりやすい解説
備讃諸島 (びさんしょとう)
瀬戸内海の播磨灘と燧(ひうち)灘に挟まれた狭い海域を備讃瀬戸といい,その周辺に散在する約110の島々を備讃諸島という。小豆島,豊(て)島,男木(おぎ)島,女木(めぎ)島,直島諸島,大槌島,小槌島,塩飽(しわく)諸島など大半は香川県(讃岐)に属し,北木島や白石島,高島などの笠岡諸島が岡山県(備中)に属する。これらの島々は,花コウ岩だけからなる島と,上部に安山岩をのせるテーブル形または円錐形の開析溶岩台地の島に分かれ,後者は一般に標高200~300mと高く,最高点は小豆島の星ヶ城山(817m)である。古来,内海交通の要路にあたり,これらの島を根拠地に水軍が活躍,近世には塩飽諸島のように人名(にんみよう)制による自治を認められたところもあった。島々の港は内海輸送の物資を集散してにぎわい,塩田が各地に広がり,そのため多くの島は天領として倉敷代官の直轄下に置かれた。明治維新後,香川・岡山両県に分かれたが,海運の衰退とともに,漁業や製塩,石材採掘,かんきつ類栽培などに依存して島の経済が支えられたが,塩田の廃止や内海漁業の不振後は働き手が出稼ぎするようになった島も多い。一方,多島海の光景は瀬戸内海国立公園中でもきわだって美しく,島伝いに架けられた瀬戸大橋(本州四国連絡橋児島~坂出ルート)への期待とともに観光開発も進んでいる。
備讃瀬戸の香川県大崎鼻と岡山県児島半島日比の間は内海で最も狭く,わずか7kmにすぎず,しかも海域一帯には春から初夏にかけて濃霧も発生しやすく,古来航行の難所である。1955年には死者168人を出した国鉄連絡船紫雲丸の沈没事故が生じている。
執筆者:坂口 良昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報