神仏習合によって成立した八幡神の像。神像は衣冠を整えた俗体で表現されることが多いが,八幡神の場合は老比丘(びく)の姿をとり,僧形神像の典型である。奈良朝末期の神仏習合の初期段階で,神も人間と同じように宿業をもち,解脱を仏法に求めると考えられた。このように神の出家によって神仏関係が調和されると同時に,神の姿は出家僧としてとらえられ,造形化されるようになった。783年(延暦2)に八幡神は菩薩号を奉られているので,僧形八幡の発生はこれより後である。最古の遺品は東寺八幡宮伝来の木彫像で,9世紀末の製作と推定されている。9世紀に入ると,八幡神は宇佐から鎮守として大安寺,神護寺,東寺へと次々に勧請され,860年(貞観2)には国家鎮護の石清水八幡宮が創建されているので,この間の勧請のおりに,僧形八幡は中央で成立したのであろう。神護寺の画像は現存はしないが,弘法大師筆の所伝を有していたため院政期には著名になり,鳥羽院に献ぜられて鳥羽の勝光明院の宝蔵に納められた。その図像は老比丘形で,衲衣(のうえ)を着け赤蓮華に座して日輪をいただき,左手に念珠,右手に錫杖をもつとされ,後世の製作の規範となった。快慶が1201年(建仁1)に製作した東大寺の僧形八幡も,彼が勝光明院で神護寺の画像を写したものである。
→神道美術
執筆者:川村 知行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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