改訂新版 世界大百科事典 「免疫不全症」の意味・わかりやすい解説
免疫不全症 (めんえきふぜんしょう)
immunodeficiency disease
生体の防御機構である免疫機構が,なんらかの原因によって障害されている状態を免疫不全といい,これによって起こる疾患を免疫不全症という。免疫機構自体の障害によって起こる原発性免疫不全症と,外因や免疫系以外の基礎疾患が原因となって起こる続発性免疫不全症に大別される。前者は遺伝的原因によるものが大部分を占め,後者は副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の投与,感染症,悪性腫瘍などが原因となる。免疫不全症は免疫機構のどこが侵されるかによって,多様な状態を示す。B細胞系の形成や機能が障害されると体液性免疫不全となり,抗体産生機能が低下して,化膿菌などに感染しやすくなる。無γ-グロブリン血症,低γ-グロブリン血症などが含まれる。T細胞系が障害されると細胞性免疫不全となり,重いウイルス感染症にかかりやすくなる。胸腺無形成症などがこの例にあたる。
このほか,B細胞系,T細胞系双方が障害されて起こる重症複合免疫不全症やウィスコット=アルドリヒ症候群,補体系の異常による免疫不全症などもある。感染症が慢性化する,しばしば感染症をくり返す,低毒性の病原体による日和見感染にかかる,湿疹や慢性の下痢があるなどの症状がある場合は,免疫不全症を疑い,抗体の機能測定,リンパ球や白血球の検査が必要となる。治療は疾患によって異なるが,γ-グロブリン製剤の投与,リンパ球輸注,胸腺移植などが行われる。
執筆者:佐藤 祥之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報