児童福祉法にもとづく児童福祉施設の一つであるが,1997年同法改正により〈児童自立支援施設〉と改称された。この施設は不良行為をなし,または,なすおそれのある児童(18歳未満)および家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ,または保護者の下から通わせて,個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い,その自立を支援することを目的とする(同法44条)。従来の教護院の対象(〈不良行為をなし,または,なすおそれのある児童〉に限定)と機能(従来は〈入所〉のみ)を拡充したものである。教護院は感化院,少年教護院の後身で,全国に57施設あり,内訳は,国立2施設(武蔵野学院,きぬ川学院),私立2施設(北海道家庭学校,横浜家庭学園),他は公立である(1996)。なお,武蔵野学院には,教護事業職員養成所が付設されている。1883年,池上雪枝が大阪市に神道祈禱所を設け,そこで不良少年の保護に着手したのが,日本における感化院的施設の最初であり,留岡幸助が東京巣鴨に家庭学校(北海道家庭学校の前身)を創設したのは99年である。1890年の感化法により,感化院の設置が府県の義務とされ,府県立感化院が相次いで設けられるとともに,私立施設も増加した。1933年の少年教護法により感化院は少年教護院と改称され,さらに47年の児童福祉法により教護院と改称された。97年の児童福祉法改正により,他のいくつかの児童福祉施設と並んで上記のように改称され,同時に〈児童家庭支援センター〉(同法44条の2)が新設された。
児童を教護院(児童自立支援施設,以下同)へ収容する手続の第1は,児童相談所長の報告に基づき都道府県知事が入所措置をとるもので,親権者の同意を要する。なお,同意をえられないときは,家庭裁判所へ送致して強制措置を求める。第2は,家庭裁判所が保護処分の一つとして教護院送致を決定するもので,親権者の同意を要しない。被収容児童中の比率は,第1によるものが圧倒的に多い。その原因は,教護院が法務省系ではなく厚生省系の施設であって,家庭裁判所の裁判官や調査官に実態をよく知られていないこと,建前とは異なり15歳までしか収容しない施設が多く,保護処分として選択しにくいこと,および,逃走防止用の鍵や高い塀を有しないことであろう。〈非行の普遍化現象〉にもかかわらず,被収容児童の家庭の欠損率(片親もしくは両親が欠けている率)は6割以上となっている。児童は小舎制cottage systemで生活し,暮しの教育,院内の学校での学ぶ教育,働く教育を受けている。小舎で指導にあたる職員を教護,教母と呼び,小舎が家庭であるかのごとく夫婦で指導するのが,家庭学校以来の伝統であり,教護院教育の特色の一つであった。しかし,職員の労働過重等への配慮から,交替制,大舎制,集中管理方式等が導入され,夫婦小舎制が崩壊しつつある施設が多い。なお入所児童の教育について,施設長は学校教育法に規定する保護者に準じて,入所中の児童を就学させなければならない(児童福祉法48条)。
→矯正教育 →少年院
執筆者:荒木 伸怡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
不良行為をなし、または、なすおそれのある18歳に満たない児童を入院させて、これを教護することを目的とする児童福祉施設。1884年(明治17)池上(いけがみ)雪枝が大阪に設立した神道祈祷(きとう)所を先駆けとする。各新法制定により、感化院、少年教護院と名称をかえてきたが、1947年(昭和22)児童福祉法の制定により教護院となった。その沿革から、不良行為を行う少年の懲罰が目的ではなく、教育・保護を目的として運営される。都道府県知事は、児童相談所長からの報告、または家庭裁判所の教護院送致決定を受けて、当該児童を入院させる。職員として教護、教母、職業指導員を置き、できるだけ家庭的な雰囲気のもとで処遇するよう配慮されている。また、児童の日常生活、児童に対する生活指導、学習指導および職業指導に必要な設備の設置が義務づけられている。生活指導は、日常生活を通して心身の健全な発達と規則正しい生活習慣の習得を目ざす。学科指導は、基礎学力を回復するため、小・中学校の教育に準じて実施され、教護院長の発行する卒業証書その他の証明書は、学校長が発行するものと法律上同等の効力を有する。職業指導は、義務教育課程の技術・家庭科の範囲で実施し、中学校卒業者に対しては農耕・園芸・畜産・土木などの指導を行う。しかし、技術の習得よりは、勤労意欲の向上、生産活動の喜びの体得に重点がある。各都道府県と政令指定都市には設置が義務づけられている。なお、1997年6月の児童福祉法改正に伴い、98年4月より「児童自立支援施設」に改称され、家庭環境その他の理由により生活指導等を要する児童も対象に加え、通所者も受け入れることになった。
[須々木主一]
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