八剣山(読み)ハッケンザン

デジタル大辞泉 「八剣山」の意味・読み・例文・類語

はっけん‐ざん【八剣山】

奈良県南部、吉野郡天川てんかわ村と上北山かみきたやま村の境にある山。標高1915メートル。頂上東の急斜面原生林におおわれオオヤマレンゲ自生地で、東山腹のトウヒシラビソの樹林帯とともに国の天然記念物に指定されている。えん行者ぎょうじゃ法華経全8巻を奉納したと伝えられることから、修験道しゅげんどう関係の石碑が多く見られる。吉野熊野国立公園に属する。仏教ヶ岳。八経ヶ岳。

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改訂新版 世界大百科事典 「八剣山」の意味・わかりやすい解説

八剣山 (はっけんざん)

紀伊山地の中央部を南北に走る大峰山脈主峰で,近畿地方の最高峰(1915m)。役行者えんのぎようじや)が《法華経》全8巻を埋納したといわれ,八経(はつきよう)ヶ岳または仏経ヶ岳の別称がある。地質は中生層で,大峰山脈の中軸部に沿って大峰酸性岩の貫入が見られる。この地域一帯は雨が多く,八剣山山頂付近はシラビソの純林やトウヒなどの原生林で覆われている。このうち,北の弥山(みせん)と結ぶ稜線の南東斜面約9haは仏経ヶ岳原始林として,オオヤマレンゲ自生地約100haとともに天然記念物に指定されている。八剣山は修験道の修行の場であり,山上ヶ岳(1719m)から弥山,八剣山を経て釈迦ヶ岳(1800m)までを尾根伝いに踏破する〈奥駆け〉は厳しい修行として知られた。吉野熊野国立公園に属する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八剣山」の意味・わかりやすい解説

八剣山
はっけんざん

奈良県南部にある大峰山脈の主峰の一つ。仏経ヶ岳,八経ヶ岳ともいう。天川村上北山村五條市の境にあり,近畿地方の最高峰。標高 1915m。役小角が経文8巻を埋納したといわれ,修験道行者が利用する大峯奥駈道 (国指定史跡) にあたる。中生層の堅岩からなり,シラビソ (白檜曾)トウヒ (唐檜)などの原生林に覆われ雄大な山容を示す。国指定天然記念物オオヤマレンゲ (大山蓮花)の自生地がある。吉野熊野国立公園に属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八剣山」の意味・わかりやすい解説

八剣山
はっけんざん

奈良県吉野郡天川(てんかわ)村と上北山(かみきたやま)村の境界にそびえる大峰山脈の主峰。標高1915メートルで、本州では近畿以西の最高峰。役行者(えんのぎょうじゃ)が『法華経(ほけきょう)』八巻を埋納したと伝えられることから八経ヶ岳(はっきょうがたけ)、ほかに仏経ヶ岳ともいう。古来、大峰修験道(しゅげんどう)の行場の一つ。八剣山から南西の明上(みょうじょう)ヶ岳にかけてはオオヤマレンゲの自生地があり、東側山腹のトウヒとシラベの樹林帯「仏経岳原始林」はともに国の天然記念物に指定されている。

[菊地一郎]

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世界大百科事典(旧版)内の八剣山の言及

【近畿地方】より

…南部は紀伊半島の突出部に相当し,紀ノ川流域の和歌山平野や櫛田川,宮川流域などに低地はみられるものの,ほぼ全域が壮年期の紀伊山地によって占められ,山地が海に迫って各所にリアス海岸が発達する。中心部に位置する八剣山(仏経ヶ岳(ぶつきようがたけ),1915m)は,近畿地方の最高峰でもある。中央部は瀬戸内陥没帯に属し,大阪平野,伊勢平野,および断層によって生じた奈良盆地,京都盆地,近江盆地,伊賀盆地などの低地と,それらを相互に隔てるおもに地塁からなる生駒(いこま)山地,金剛山地,布引山地,鈴鹿山脈,大和高原などの山地とからなっている。…

※「八剣山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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