公奴婢(読み)クヌヒ

デジタル大辞泉 「公奴婢」の意味・読み・例文・類語

く‐ぬひ【×婢】

律令時代、個人所有の私奴婢に対して、官有奴婢をいう。宮内省官奴司かんぬしの管轄下で、労役に従事した。66歳以上は官戸かんこ、76歳以上は良民とされた。官奴婢かんぬひ

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精選版 日本国語大辞典 「公奴婢」の意味・読み・例文・類語

く‐ぬひ【公奴婢】

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公奴婢」の意味・わかりやすい解説

公奴婢
くぬひ

日本古代の律令(りつりょう)制における五色(ごしき)の賤(せん)の一つで奴隷。官(かん)奴婢とも称される。宮内省官奴司(かんぬし)が、官戸(かんこ)とともに名籍をつくり管理し、内裏(だいり)、宮内省、中務(なかつかさ)省や離宮で、主として天皇の家産経済のための労働に使役された。総数は数百人と推定されるが、758年(天平宝字2)に大量に解放されて今良(ごんろう)という新しい身分とされてから以降は急速に減少した。

[石上英一]

『井上光貞他編『日本思想大系3 律令』(1976・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公奴婢」の意味・わかりやすい解説

公奴婢
こうぬひ
kong-nobi

朝鮮で,王室官衙に隷属した奴婢。奴婢はきわめて古くから存在したが,高麗時代には最下層民としての公,私奴婢の制度が厳格に行われ,その売買贈与,相続などが公認された。公奴婢は,ほう上奴婢,納貢奴婢に分れ,前者は一定期間官衙の労役に従事し,後者は,奴の場合は年に綿布1匹,こうぞ 20張 (16世紀以後は綿布1匹) ,婢の場合は綿布1匹,こうぞ 10張 (のちに綿布半匹) を,それぞれ官衙に納めなければならなかった。この制度はだいたい変らず,朝鮮王朝 (李朝) 末期高宗 31 (1894) 年の甲午の改革まで存続

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旺文社日本史事典 三訂版 「公奴婢」の解説

公奴婢
くぬひ

律令制における官有の賤民
官奴婢 (かんぬひ) ともいわれ,個人所有の私奴婢に対する。大化の改新以前の大和政権所有奴婢が,引き続き律令制の諸官庁に属して官田耕作雑役に従事した。戸を形成できず良民との結婚は禁止され,売買の対象となった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「公奴婢」の解説

公奴婢
くぬひ

官奴婢(かんぬひ)

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世界大百科事典(旧版)内の公奴婢の言及

【賤民】より

…【寺田 隆信】
[朝鮮]
 賤民は古代から存在するが,高麗時代までは公私の奴婢(ぬひ)が大部分を占めていた。公奴婢は官衙に所属し,私奴婢は貴族のほか農民にまで所有され,さまざまな労働を強制された。かつて高麗時代に広範に存在した〈郷〉〈所〉〈部曲〉を集団賤民とする説が有力であったが,現在ではほぼ否定されている。…

【奴婢】より

…男性を奴(やつこ),女性を婢(めやつこ)と称する。律令制以前には奴隷的な賤民を一括して奴婢と称したが,大宝令(戸令)では,私有奴婢は私奴婢と家人(けにん)(家族を成し家業を有し売買されない上級賤民)に,官有奴婢は官奴婢(公奴婢とも)と官戸(かんこ)(家人とほぼ同じ身分)に分化した。奴婢は所有者により資財と同じに物として扱われ,相続・贈与や売買・質入れの対象とされた。…

※「公奴婢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」