古代から近世まで用いられた天皇の印。外印(げいん)(太政官の印)に対するもの。〈公式令(くしきりよう)〉によって定められ,その印文は〈天皇御璽〉の2行4字である。大きさは方3寸(現行尺の約2寸9分,約8.8cm)とされ,銅製。製作ははじめ宮内省鍛冶司が担当し,のちに中務(なかつかさ)省の内匠寮でおこなわれた。何回か作りかえられ,奈良時代から江戸時代まで,実際に捺されたものをみると,一辺が8.8cmから8.5cmまで数種類ある。太政官では少納言が監し,詔勅書はじめ五位以上の位記(いき)および諸国に下す公文(くもん)に捺すと定められていた。捺印の儀式を請印(しよういん)といい,内裏において少納言の指示で主鈴が捺印することになっていた。現在内印の捺されている文書で,最古のものは749年(天平勝宝1)の聖武天皇勅書で,紙全面に30捺されている。
執筆者:飯倉 晴武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令制下の印。印面は3寸四方で「天皇御璽(ぎょじ)」を印文とし,律令に規定された印の最大のもの。公式令に五位以上の位記と諸国に下す文書に捺すように定められていたが,諸国に下す小事に捺印を守らない事例がでてきたため,720年(養老4)一部の小事については外印(太政官印)ですませることとした。「延喜式」には詔書の頒下など内印を捺すべき大事の類例があげられている。内印を捺すには弁官を通して手続きが行われるが,これを請印(しょういん)といった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…このほかの公印を令外(りようげ)印というのに対し,これを令制印と呼ぶ。印の制度は公式令(くしきりよう)に厳重に規定され,天皇印は内印と称し印文〈天皇御璽〉の4字を2行に篆書(てんしよ),陽刻,方3寸(8.7cm)で,外印は方2寸半(7.6cm)とされ,内印を最大としてこれを超すことは禁じられた。令制印は正方形,準公印(私鋳印)には正円・隅取など正方形以外の形もとられた。…
※「内印」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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