分限帳(読み)ブンゲンチョウ

デジタル大辞泉 「分限帳」の意味・読み・例文・類語

ぶんげん‐ちょう〔‐チヤウ〕【分限帳】

戦国時代から江戸時代にかけて、将軍や大名が作成した家臣の名簿

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精選版 日本国語大辞典 「分限帳」の意味・読み・例文・類語

ぶんげん‐ちょう‥チャウ【分限帳】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 武士の身分・格式、役職、知行・俸祿・席次などを詳記した帳簿。今日の職員録にあたる。
    1. [初出の実例]「すみやかに分限帳にのせ、相当之奉公すべき也」(出典:黒川本今川仮名目録‐定(1560頃)一二条)
  3. 江戸時代、資産家氏名をその多い者から順次列記した帳簿。
    1. [初出の実例]「分限帳(ブンゲンチャウ)で、五番目とは下らぬ家産」(出典人情本・清談若緑(19C中)初)

ぶげん‐ちょう‥チャウ【分限帳】

  1. 〘 名詞 〙ぶんげんちょう(分限帳)

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改訂新版 世界大百科事典 「分限帳」の意味・わかりやすい解説

分限帳 (ぶげんちょう)

〈ぶんげんちょう〉ともいい,侍帳,家中帳,給所帳とも呼ばれる。近世大名の家臣の禄高,役職,名などを記した帳面。分限とは富,財産のことで,さらに身分や地位を意味し,中世においても惣領が庶子に所領の大きさに応じて軍役を割り当てる際に,〈分限に応じ〉というように使われている。分限帳の内容は,作成の目的によって,(1)家臣団の軍事的配属を示す一種の陣立書ともいうべきもの,(2)番方(番方・役方)の家臣については上記の方法で記しながら,これと並列して役方や江戸詰などの家臣の日常行政的配属を別に記したもの,(3)大名が家臣団に役金,米を賦課する際の台帳として作成されたもの,(4)家臣に給所(知行地)を割りつける際の台帳として作成されたもの,などに分類される。これらはいずれも必要があって作成された公的な帳簿であり,家臣の身分上の移動に対応するために短冊で張り替えられるようにしたものや,いろは分けになっているものがある。以上のほかに,職員録に対するような関心や懐古的関心から上記の分限帳が筆写されて,巷間に伝わったものもある。分限帳の呼称が成立したのは江戸時代であるが,戦国大名の家臣の貫高や名を列記したものも,《小田原衆所領役帳》が後世に〈北条家分限帳〉と呼ばれたように,分限帳ということもあった。江戸幕府では,諸役職者が配下の旗本,御家人,同心などの禄高,経歴などを書き上げて大目付に提出した帳面を分限帳と呼び,これは実務的には右筆が管理した。以上の武士に関するもののほかに,近世後期になると町人の身代(しんだい)(資産)を記した長者番付も分限帳と呼ばれた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「分限帳」の意味・わかりやすい解説

分限帳
ぶんげんちょう

戦国・織豊(しょくほう)期に大名が作成した家臣団の名簿。家臣の家格や役割などに応じて、その所領や扶持高(ふちだか)などを記したもの。「ぶげんちょう」ともいう。とくに著名なものに、北条氏康(うじやす)が1559年(永禄2)にまとめた小田原衆所領役帳(おだわらしゅうしょりょうやくちょう)がある。そのほか、織田信雄(のぶかつ)分限帳、浮田(うきた)家分限帳、成田(なりた)家分限帳、里見(さとみ)家分限帳、加藤清正侍帳(きよまささむらいちょう)など多数が現存している。しかしそれらのなかには、戦国期の当該地域領主の追慕・顕彰のためや、自家の家格を高めるための由緒書的なものなど、江戸期に偽作されたものも多い。今川家分限帳や鉢形(はちがた)北条家臣分限録などはその代表的なものである。

[大久保俊昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分限帳」の意味・わかりやすい解説

分限帳
ぶんげんちょう

「ぶげんちょう」とも読む。戦国時代以降,大名が領国内の家臣団成員をその身分,家格別に列挙した名簿。江戸時代にはどの藩も行政,財政上の必要からつくったが,しばしば民間にも写しがつくられ職員録としての役割を果し,幕府中心の武鑑と並んで利用された。知行高,扶持高も記されているので,藩内の構造を知るのに便利である。『京極家分限帳』『福島正則家中分限帳』『加藤清正侍帳』などが知られるが,有名なのは永禄2 (1559) 年北条氏康が作製した『北条家所領役帳』で,領内の藩士およびその家族,足軽,社寺領職人などの所領まで記してある。

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百科事典マイペディア 「分限帳」の意味・わかりやすい解説

分限帳【ぶげんちょう】

江戸時代,大名の家臣の名前・知行高・役職などを書き上げた公的な帳面。分限とは本来富・財産を指すが,さらに広げて身分・地位等をも意味する。〈ぶんげんちょう〉とも呼び,侍帳・家中帳・給所帳とも称された。内容面では家臣に給所を充行(あておこな)う際の台帳,家臣に役金等を課す際の台帳,軍事的配置を記す軍役帳,家臣の行政上の配属を記すものなどがある。なお戦国大名小田原北条氏の家臣団の名前・知行地などを書き上げた《小田原衆所領役帳(おだわらしゅうしょりょうやくちょう)》が,後世〈北条家分限帳〉と呼ばれたように,拡大した呼称となった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「分限帳」の解説

分限帳
ぶげんちょう

「ぶんげんちょう」とも。戦国大名などが作成した,家臣の軍役高など役高を記した帳簿。戦国~江戸初期に作られたものには,成田家分限帳のように家臣の名と役高のみを書くものと,里見家分限帳のように家臣の所領も記すものがある。家臣団の状況を伝える史料だが,現存のものには後世の作も多い。江戸時代には幕府や諸藩で家臣の役職や役高を示した帳簿として何度も作成された。幕府では正徳期の御家人分限帳が著名。諸藩に多く残り,職制や家臣団の全貌を知ることができる。

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世界大百科事典(旧版)内の分限帳の言及

【分限帳】より

分限とは富,財産のことで,さらに身分や地位を意味し,中世においても惣領が庶子に所領の大きさに応じて軍役を割り当てる際に,〈分限に応じ〉というように使われている。分限帳の内容は,作成の目的によって,(1)家臣団の軍事的配属を示す一種の陣立書ともいうべきもの,(2)番方(番方・役方)の家臣については上記の方法で記しながら,これと並列して役方や江戸詰などの家臣の日常行政的配属を別に記したもの,(3)大名が家臣団に役金,米を賦課する際の台帳として作成されたもの,(4)家臣に給所(知行地)を割りつける際の台帳として作成されたもの,などに分類される。これらはいずれも必要があって作成された公的な帳簿であり,家臣の身分上の移動に対応するために短冊で張り替えられるようにしたものや,いろは分けになっているものがある。…

【分限】より

…そこから分限の語は〈身の程〉とか,〈分際〉とかの意味でも使われた。戦国時代以後は武士の分限を記した分限帳が作成されている。なお分限の大なる者を分限者と呼び,商人の分限者は富商,金持ちの代名詞となった。…

※「分限帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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