〈ぶんげんちょう〉ともいい,侍帳,家中帳,給所帳とも呼ばれる。近世大名の家臣の禄高,役職,名などを記した帳面。分限とは富,財産のことで,さらに身分や地位を意味し,中世においても惣領が庶子に所領の大きさに応じて軍役を割り当てる際に,〈分限に応じ〉というように使われている。分限帳の内容は,作成の目的によって,(1)家臣団の軍事的配属を示す一種の陣立書ともいうべきもの,(2)番方(番方・役方)の家臣については上記の方法で記しながら,これと並列して役方や江戸詰などの家臣の日常行政的配属を別に記したもの,(3)大名が家臣団に役金,米を賦課する際の台帳として作成されたもの,(4)家臣に給所(知行地)を割りつける際の台帳として作成されたもの,などに分類される。これらはいずれも必要があって作成された公的な帳簿であり,家臣の身分上の移動に対応するために短冊で張り替えられるようにしたものや,いろは分けになっているものがある。以上のほかに,職員録に対するような関心や懐古的関心から上記の分限帳が筆写されて,巷間に伝わったものもある。分限帳の呼称が成立したのは江戸時代であるが,戦国大名の家臣の貫高や名を列記したものも,《小田原衆所領役帳》が後世に〈北条家分限帳〉と呼ばれたように,分限帳ということもあった。江戸幕府では,諸役職者が配下の旗本,御家人,同心などの禄高,経歴などを書き上げて大目付に提出した帳面を分限帳と呼び,これは実務的には右筆が管理した。以上の武士に関するもののほかに,近世後期になると町人の身代(しんだい)(資産)を記した長者番付も分限帳と呼ばれた。
執筆者:高木 昭作
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戦国・織豊(しょくほう)期に大名が作成した家臣団の名簿。家臣の家格や役割などに応じて、その所領や扶持高(ふちだか)などを記したもの。「ぶげんちょう」ともいう。とくに著名なものに、北条氏康(うじやす)が1559年(永禄2)にまとめた小田原衆所領役帳(おだわらしゅうしょりょうやくちょう)がある。そのほか、織田信雄(のぶかつ)分限帳、浮田(うきた)家分限帳、成田(なりた)家分限帳、里見(さとみ)家分限帳、加藤清正侍帳(きよまささむらいちょう)など多数が現存している。しかしそれらのなかには、戦国期の当該地域領主の追慕・顕彰のためや、自家の家格を高めるための由緒書的なものなど、江戸期に偽作されたものも多い。今川家分限帳や鉢形(はちがた)北条家臣分限録などはその代表的なものである。
[大久保俊昭]
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「ぶんげんちょう」とも。戦国大名などが作成した,家臣の軍役高など役高を記した帳簿。戦国~江戸初期に作られたものには,成田家分限帳のように家臣の名と役高のみを書くものと,里見家分限帳のように家臣の所領も記すものがある。家臣団の状況を伝える史料だが,現存のものには後世の作も多い。江戸時代には幕府や諸藩で家臣の役職や役高を示した帳簿として何度も作成された。幕府では正徳期の御家人分限帳が著名。諸藩に多く残り,職制や家臣団の全貌を知ることができる。
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…分限とは富,財産のことで,さらに身分や地位を意味し,中世においても惣領が庶子に所領の大きさに応じて軍役を割り当てる際に,〈分限に応じ〉というように使われている。分限帳の内容は,作成の目的によって,(1)家臣団の軍事的配属を示す一種の陣立書ともいうべきもの,(2)番方(番方・役方)の家臣については上記の方法で記しながら,これと並列して役方や江戸詰などの家臣の日常行政的配属を別に記したもの,(3)大名が家臣団に役金,米を賦課する際の台帳として作成されたもの,(4)家臣に給所(知行地)を割りつける際の台帳として作成されたもの,などに分類される。これらはいずれも必要があって作成された公的な帳簿であり,家臣の身分上の移動に対応するために短冊で張り替えられるようにしたものや,いろは分けになっているものがある。…
…そこから分限の語は〈身の程〉とか,〈分際〉とかの意味でも使われた。戦国時代以後は武士の分限を記した分限帳が作成されている。なお分限の大なる者を分限者と呼び,商人の分限者は富商,金持ちの代名詞となった。…
※「分限帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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