近代的所得税は一般に総合課税主義をとり,個人に帰属する所得を総合して累進課税を行う。しかし分離課税とは,特定の所得について,他の所得と総合すれば税負担が過重となるため,あるいは一定の政策目的を促進するため,他の所得と合算しないで課税する方式を指す。分離課税には,山林所得や退職所得のように,税額計算は他の所得と分離して行うが,納税は確定申告により行うものと,利子所得,配当所得の分離課税のように,一定の税率による源泉徴収だけで済ます源泉分離課税とがある。山林所得と退職所得が分離課税されるのは,長期間にわたる経営および勤労の結果得られ,かつ一時的な所得なので,他の経常的所得と合算して累進課税をするのは妥当ではないとされているからである。つまり,所得を稼得するまでの期間の長短,また所得が一時的か経常的かによって,所得を総合するか分離するかが定まる。これに対し,利子所得と配当所得は資本蓄積という〈一定の政策目的〉を促進するため,租税特別措置法により設けられている。償還差益(割引債券(割引金融債や割引国債など)における発行価額と償還価額との差額に相当する所得)の分離課税も同様の趣旨による。近年では,土地・建物等の譲渡所得にも分離課税の特例が認められるようになった。このような分離課税は,総合累進所得税というたてまえに反するものであり,税収不足を招くということのみならず課税の公平のうえからつよい批判がある。
→所得税 →租税特別措置
執筆者:古田 精司
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