伽婢子とも書く。仮名草子。瓢水子松雲(浅井了意)作。13巻13冊。1666年(寛文6)刊。別版に99年(元禄12)刊本や,その1826年(文政9)後印本がある。中国・明の怪異小説,瞿佑(くゆう)の《剪灯新話(せんとうしんわ)》や,李昌祇(りしようき)の《剪灯余話》などを翻案したもの。〈御伽婢子〉とは子どもの魔よけの人形のことで,序によれば,幼童向けの教訓の書であるから,このような書名がつけられたという。67話の奇談からなり,因果応報・勧善懲悪の思想をもって書かれている。その翻案態度は,時代,人名,地名,風俗などをすべて日本に移し,文章も流麗で,少しも翻訳臭さが残っていない。続編の《狗張子(いぬはりこ)》とともに,了意の名を不朽ならしめた本書は怪異小説の嚆矢(こうし)で,近世怪異小説の一時期を画したもので,後世への影響は非常に大きい。三遊亭円朝の人情噺《怪異談牡丹灯籠》の原話がすでにここに見られる。
→怪談
執筆者:松田 修
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浅井了意(りょうい)の仮名草子。1666年(寛文6)刊。13巻68話。近世初期を代表する怪異小説集。その素材のほとんどを中国の怪異小説ならびに雑書から得るが、巧みな翻案でまったく異国臭を感じさせないほど日本化している。約3割の奇譚(きたん)を含むがおもに時代を日本の戦国に移して幻想的・浪漫(ろうまん)的世界を創出するのが特徴。とくに明(みん)の瞿佑(くゆう)の『剪灯(せんとう)新話』(4巻20話)からは18話とっており、叙情性豊かな翻案文は原作以上との評もある。仏教的応報のにおいが強かったわが国の怪異譚に人間のもつ怨念(おんねん)や情念を付加、近世怪異小説のスタイルを確立した。
[江本 裕]
『『日本名著全集10 怪談名作集』(1927・同書刊行会)』▽『『近世文芸叢書3』(国書刊行会叢書本復刻・1976・第一書房)』
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…人や動物の執念や,もののタタリが信じられており,文学史的現象としては,近世民間怪談を集めた《義残後覚》(1596)や荻田安静の《御伽物語》があり,この流行は〈百物語〉系統の出版となって長く続く。また《奇異雑談集》(1687),《怪談全書》(1698)など,話の種としての中国怪談紹介のブームの中で,浅井了意は《剪灯新話》をもとに《御伽婢子(おとぎぼうこ)》(1666)を書いて新しい文学的境地を開いたが,この系統から都賀(つが)庭鐘,上田秋成,伊丹椿園らの,知識人作者による現実批判としての幻想怪異小説が生まれた。それに対して民間怪談はしだいにグロテスクで退廃的な耽奇へ走り,因縁話的な色彩を求め,その結果,江戸時代後期になると,芸能,文芸を問わず,職業化した作者や演者による合巻,読本,歌舞伎等は,争って人間世界の邪悪な葛藤,それを原因とする殺人,加虐,そして血みどろな亡霊とその凄惨な復讐,あるいは,化猫,蛇の執着といったテーマに走るとともに,独自な妖美・淫虐な世界を作った。…
…(1)人情噺の作品。中国呉山の宗吉(そうきつ)(瞿佑,1341‐1427)の小説《剪灯新話(せんとうしんわ)》を,1666年(寛文6)浅井了意が《御伽婢子(おとぎぼうこ)》として翻案。その中の《牡丹灯記》は,山東京伝,鶴屋南北も脚色しているが,明治の人情噺の名人三遊亭円朝が《怪談牡丹灯籠》として創作した。…
…日本に伝わり1653年(承応2)和刻本が刊行され,江戸時代の怪談小説の流行に一役買っている。浅井了意の《御伽婢子(おとぎぼうこ)》の〈歌を媒として契る〉は〈李生窺牆伝〉の翻案と見られる。【大谷 森繁】。…
…清初の《聊斎志異(りようさいしい)》もこの系統に属する。日本では江戸時代の《御伽婢子(おとぎぼうこ)》以下この書に取材した作品が多く,特に《牡丹灯記》を改作した三遊亭円朝の《牡丹灯籠》は有名。【村松 暎】。…
※「御伽婢子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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