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労働慣行 ろうどうかんこう

世界大百科事典 第2版の解説

ろうどうかんこう【労働慣行】

労使間において一定の事実や行為が相当長期間にわたり反復継続して存在し,労使双方がこれを異議なく受け入れ,法規範と意識され拘束力を認めている場合がある。たとえば,賃金規則に基づいて行われていたストライキ時の家族手当の削減が,当該規定削除後も異議なく行われている場合である。これを労働慣行または労使慣行と呼んでいる。労使間の労働関係は継続的労働契約関係を基礎としているので,労使間の合意に根拠をおかなくとも継続的に存在している一定の事実や行為に,それが合理的な内容をもつものとして認容されるかぎり,法的拘束力を付与して労働関係を補完・補充していくことが妥当である。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

労働慣行
ろうどうかんこう

制定法、判例法、社会的自主法(組合規約、労働協約、就業規則)などとともに労働法の法源の一つである。労使慣行ともいう。労働法は、集団的労使関係において徐々に形成されてきた労働慣行を法に取り込む形で展開してきた。また、労働法はその形成過程で労働慣行を生み出していくような機能を営んできた。したがって労働慣行は、法令、協約、就業規則などを補充する機能やそれらを改廃する機能を営む。その内容には、労働条件・経営規律をめぐる慣行、組合活動・争議をめぐる慣行などと、その妥当する領域から分類した企業内慣行、特定の産業界の慣行や地方的慣行、全国的慣行、国際的慣行などがある。
 労働慣行が問題となるのは、企業が合理化をなす過程で、合理化に反対する労働組合の活動を抑えるために、職場でそれまで承認してきた組合活動をめぐる慣行、あるいは労働条件に関する慣行を、一方的に廃棄するからである。その場合、労働慣行が法源となるかどうかが問われるのは、法令、協約、就業規則に規定のない問題についての慣行、それらの規定の運営についての慣行、あるいはそれらの規定に反する慣行に関してである。そして、これらの慣行が法的にいかなる意味をもつかが不当労働行為事件や懲戒解雇事件などのなかで争われたのである。
 労働慣行が法的拘束力をもつのは、そこに労使間の黙示の合意が推定されるからである。慣行が成立するには、原則として相当長期間にわたって行われること(継続性)、何回か繰り返し実施されること(反復性)が必要とされる。継続的に反復された事実のうちにそれを黙示的に承認する当事者の意思が推定されるからである。しかし、労働慣行に法的拘束力が認められるには、それだけでは足りず、法的に合理性をもたねばならない。一般に憲法の団結権・団体行動権保障の秩序や労働法の理念に反する慣行はその効力を否定される。また、労働協約や就業規則の基準よりも労働者にとり有利な内容の慣行は原則として有効、不利な内容の慣行は無効と判断される。慣行の廃棄については、労使の黙示の合意が慣行の根拠になっている以上、労使の明示または黙示の合意により廃棄できるが、いずれか一方の通告だけでただちに効力を失うものではない。なぜなら、労働慣行が成立し定着するには社会的必然性が認められ、社会的合理性があると考えられるからである。したがって労働慣行を廃棄するためには、廃棄する側の主張の合理性が判断される必要がある。
 近年、経済のグローバル化、ボーダレス化により、日本的雇用慣行そのものが変化してきている。国内のみならず国際間企業競争の激化と淘汰(とうた)により雇用は流動化し、終身雇用という雇用慣行も大きく揺らいでいる。年功制度も変化し、能力主義型の賃金制度が広がっている。労働組合の組織率の低下も著しい。こうした日本的雇用慣行の変化は、これまでそれが解雇権濫用法理や配転法理などの労働法の解釈に大きな役割を果たしてきただけに、労働法もまた、大きく影響を受けざるをえない。[寺田 博]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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