長崎県北部、壱岐(いき)郡にあった旧町名(勝本町(ちょう))。現在は壱岐市勝本町地区。旧勝本町は1935年(昭和10)香椎(かしい)村が町制施行、勝本町となる。1955年(昭和30)鯨伏(いさふし)村と合併。2004年(平成16)郷ノ浦(ごうのうら)町、芦辺(あしべ)町、石田町と合併、市制施行して壱岐市となる。旧勝本町は、壱岐島の北端に位置する。『和名抄(わみょうしょう)』の可須郷(かすごう)の地。神功(じんぐう)皇后が新羅(しらぎ)への出陣のとき、この地を「風本(かざもと)」と名づけ、凱旋(がいせん)の際「勝本」に改めたと伝えられる。勝本港の港口には辰(たつ)ノ島、名烏(ながらす)島、若宮島があって天然の防波堤をなし、漁業基地ともなっている。背後の台地は畑作を主とし、ミカン、タバコ、ニンニクを産し、肉用牛の生産も盛んである。国道382号が通る。海岸の大部分は壱岐対馬国定公園(いきつしまこくていこうえん)に含まれる景勝地で、湯本(ゆのもと)湾岸には壱岐唯一の湯ノ本温泉がある。港の入口には神功皇后を祀(まつ)る聖母(しょうも)宮が、背後には豊臣秀吉(とよとみひでよし)の命によって松浦鎮信(まつらしげのぶ)が築城した勝本城跡(城山公園)がある。園内にこの地で没した俳人曽良(そら)の句碑がある。辰ノ島の海浜植物群落は、国指定天然記念物である。
[石井泰義]
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