長崎県の壱岐、対馬2島の海岸景勝部を中心にした国定公園。壱岐、対馬は九州本土と朝鮮半島との間に飛び石状に分布し、古来、日本と大陸との文化交流の中継地としての役割を果たした国境の島で、自然美とともに史跡に富む島として、1968年(昭和43)指定された。指定面積119.46平方キロメートル。
壱岐、対馬には原の辻(はるのつじ)遺跡(壱岐)などの弥生(やよい)遺跡や、鬼ノ窟(いわや)古墳(壱岐)や保床(ほとこ)山古墳(対馬)をはじめとする古墳が多く、天平(てんぴょう)時代には島分寺(とうぶんじ)が建てられ、式内社は対馬に29座、壱岐に24座を数える。対馬には、朝鮮式山城の金田城(かなたのき)が築かれ、防人(さきもり)が置かれて、竜良(たてら)山など8か所に烽(とぶひ)が設けられた。また壱岐、対馬には元寇(げんこう)の史跡も多い。対馬の北端は韓国との距離わずかに50キロメートルで高麗(こうらい)山などの山地からは韓国の山々が望まれる。山地は標高500メートル内外の準平原で、矢立(やたて)山(649メートル)などのモナドノック(残丘)を有し、御岳の鳥類繁殖地(みたけのちょうるいはんしょくち)(サンコウチョウ、ヤイロチョウなど)は国の天然記念物に指定されている。観光の中心は浅茅(あそう)湾の溺れ谷(おぼれだに)の景観で、付近に大船越(おおふなこし)瀬戸や万関(まんぜき)瀬戸がある。壱岐は玄武岩からなる低平な台地状の島で、集落は台地上の触(ふれ)(農業集落)と海岸の浦(漁業集落)に分化している。もっとも豪壮な自然景観は蛇ヶ谷(じゃがたに)(辰(たつ)ノ島)の海食崖(がい)である。左京(さきょう)鼻と牧崎はともに海食崖・洞穴と放牧の景観が優れている。筒城(つつき)浜、錦(にしき)浜の砂浜は美しく海水浴客でにぎわう。また、海域公園には壱岐の辰ノ島、手長島、妻ヶ島、対馬の浅茅湾、神崎がある。交通は、壱岐空港、対馬空港に福岡空港、長崎空港などから定期空路があり、博多(はかた)港などからの船便もある。
[石井泰義]
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…そのほかに水産加工,麦焼酎の生産があるが,いずれも小規模な経営である。 1968年壱岐対馬国定公園に指定された壱岐は,全島にわたってリアス式海岸が発達し,海岸線はきわめて変化に富む。宇土湾や半城(はんせい)湾の景観,辰ノ島(海浜植物群落は天然記念物),左京鼻などの海食崖,蛇ヶ谷(じやがたに),鬼の足跡などの海食洞ほかの景勝地があり,また湯本湾に面して壱岐唯一の湯本温泉がある。…
…地下資源は亜鉛,鉛を埋蔵し,東邦亜鉛が厳原町佐須地区の対州鉱山で採掘し精錬していたが,カドミウム公害の発生もあって73年に閉山し,めぼしい鉱工業は島から消えた。 変化に富んだリアス海岸と美しい自然林,多くの史跡に恵まれ,1968年壱岐対馬国定公園に指定された。72年には大型フェリーが厳原~博多間に就航,75年には対馬空港が美津島町に開設され,さらに対馬を縦貫する国道382号線も整備されつつある。…
※「壱岐対馬国定公園」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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