新薬師寺(読み)しんやくしじ

日本大百科全書(ニッポニカ)「新薬師寺」の解説

新薬師寺
しんやくしじ

奈良市高畑(たかばたけ)町にある華厳(けごん)宗の。日輪山(にちりんさん)と号し、香(こう)薬師寺香薬寺、香山(こうぜん)薬師ともいう。本尊薬師如来(にょらい)。寺伝によると、もとは聖徳太子の創建で、香薬師仏を本尊とする香薬師寺といった。『東大寺要録』によれば、奈良時代、聖武(しょうむ)天皇の眼病平癒を祈願して光明(こうみょう)皇后が仏堂を建立して丈六薬師如来像を安置し、その胎内に本尊香薬師仏および仏舎利5粒、宸筆(しんぴつ)『薬師本願経』『法華経(ほけきょう)』、皇后御筆の『金剛般若経(こんごうはんにゃきょう)』と『法華経』各1部を収めたのに始まり、また東大寺別院となって、寺号も日輪山新薬師寺と改めたという。一説には光明皇后の眼病平癒を祈って聖武天皇が発願した寺であるともいう。749年(天平勝宝1)には墾田(こんでん)500町が施入され、4丁四方に七堂伽藍(がらん)の結構を誇る住僧1000人の大寺となった。東大寺とともに南都十大寺の一つに数えられた。780年(宝亀11)西塔に落雷があって現本堂国宝)を残し焼失して衰亡したが、鎌倉時代には、明恵上人(みょうえしょうにん)が住して東門、南門、地蔵堂、鐘楼(以上、国の重要文化財)などを再建し、解脱(げだつ)上人貞慶(じょうきょう)は多くの衆徒(しゅと)をこの寺に集めた。江戸時代、護持院隆光(りゅうこう)が徳川綱吉の母桂昌院(けいしょういん)の意向を受けて再建にあたり、幕府から寺領100石の寄進を受けた。

 国宝建造物をはじめ奈良から江戸時代にかけての彫刻・絵画・工芸の貴重な宝物が多い。とくに、本尊の丈六薬師如来像、円形須弥壇(しゅみだん)上の十二神将立像は国宝で、有名である。ほかに十一面観音像、准胝(じゅんてい)観音像、絹本着色仏涅槃(ぶつねはん)図などが国の重要文化財に指定されている。また、1943年(昭和18)盗難にあって現在所在不明の銅造香薬師仏(国の重要文化財)は、白鳳(はくほう)時代の逸品であった。境内には会津八一(あいづやいち)の歌碑がある。

[里道徳雄]

『『古寺巡礼 奈良4 新薬師寺』(1979・淡交社)』

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百科事典マイペディア「新薬師寺」の解説

新薬師寺【しんやくしじ】

奈良市高畑町にある華厳宗の寺。別格本山。南都十五大寺の一つ。聖武天皇の病気平癒(へいゆ)を祈り747年に光明皇后が創建したと伝えるが,明らかでない。現本堂は奈良時代の建築。ほかに鎌倉時代の地蔵堂,南門,東門,鐘楼などが残る。本尊薬師如来座像は一木造巨像で,平安初期の作。本尊を取り囲む塑像の十二神将立像は波夷羅大将像を除いて奈良時代の作で,日本最古の十二神将像として名高い。
→関連項目一木造

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精選版 日本国語大辞典「新薬師寺」の解説

しん‐やくしじ【新薬師寺】

奈良市高畑町にある華厳宗の寺。山号は日輪山。天平一九年(七四七)光明皇后が聖武天皇の眼病全快祈願のために創建。開山行基(ぎょうき)。もと東大寺別院。宝亀一一年(七八〇)本堂を残して焼失。現存の南門・地蔵堂などは鎌倉時代中期の再建。国宝に本堂と本尊の薬師如来坐像、十二神将立像がある。香薬師寺。香薬寺。香山薬師。

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デジタル大辞泉「新薬師寺」の解説

しん‐やくしじ【新薬師寺】

奈良市高畑町にある華厳宗の別格本山。山号は日輪山。天平19年(747)光明皇后聖武天皇の病気平癒を祈願して建立したと伝える。開山は行基。奈良時代末期の遺構をとどめる本堂や薬師如来坐像・十二神将像は国宝。香山寺。香薬師寺。香薬寺。香山薬師。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「新薬師寺」の解説

新薬師寺
しんやくしじ

奈良市高畑町にある華厳宗の寺。天平 19 (747) 年に光明皇后が聖武天皇の眼病平癒祈願のため創立。創建当時の唯一の遺構である天平時代の本堂,平安時代初期の本尊『薬師如来坐像』,天平時代の『十二神将立像』はともに国宝で名高い。

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旺文社日本史事典 三訂版「新薬師寺」の解説

新薬師寺
しんやくしじ

奈良市高畑町にある華厳宗の寺
747年,光明皇后が行基に命じて建立。本尊『薬師如来像』は平安初期の作で一木造の巨像。本尊をめぐって円壇に,天平末期の代表作である『十二神将像』(塑像)が並んでいる。

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デジタル大辞泉プラス「新薬師寺」の解説

新薬師寺

奈良県奈良市にある寺院。華厳宗。山号は日輪山。747年、光明皇后による創建と伝わる。本尊の木造薬師如来坐像と塑造十二神将立像は国宝に指定。

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世界大百科事典 第2版「新薬師寺」の解説

しんやくしじ【新薬師寺】

奈良市高畑町にある華厳宗の別格本山。本尊薬師如来座像。南都十五大寺の一つ。新薬寺香山薬師寺,香薬寺とも称せられた。《東大寺要録》《延暦僧録》によると,747年(天平19)3月に光明皇后が聖武天皇の病気全快を祈って七仏薬師像と九間仏殿を創建したのに始まり,平城右京の薬師寺に対して新建の薬師寺という意味で新薬師寺と称せられた。《正倉院文書》では748年7月に寺名が初見し,749年(天平勝宝1)7月に諸大寺の墾田地限を定めたとき,法隆寺弘福寺四天王寺などとともに500町と認められた。

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世界大百科事典内の新薬師寺の言及

【奈良時代美術】より

…これに対して伝日光・月光像は,その造形に法華堂本尊に通うものがあるが繊細な温雅さがあり,乾漆像が唐代全盛の気宇壮大な様式を伝えているのに対して,伝日光・月光像はこれらの様式を消化したこの時代の和様像となす向きもある。 また天平年間の造立とみなされるものに,新薬師寺の十二神将像がある。塑像の白土下地に彩色および漆箔仕上げが施されている。…

※「新薬師寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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