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甲骨学 こうこつがくJia-gu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

甲骨学
こうこつがく
Jia-gu

中国,殷代の占卜である亀甲獣骨に刻まれた文字を解読し,その内容を研究する東洋史学の一部門。またそれによって中国古代文化を研究する学問を広く甲骨学の名称で呼んでいる。甲骨文研究は清朝の末年に金石学を母体として生れ,光緒 29 (1903) 年に甲骨関係最初の著作である『鉄雲蔵亀』が劉鶚によって著わされた。その後,孫詒譲の『契文挙例』,羅振玉の『殷商貞卜文字考』 (10) などの研究が出るに及んで甲骨学の出発点が確立した。 1928~37年に 15次にわたって行われた殷墟の発掘によって,多くの甲骨が出土し,一方,王国維は殷王系 22帝を卜辞の人名に比定し,また,董作賓は貞人集団,断代研究を行うなど基礎的な研究が行われた。胡厚宣,陳夢家,郭沫若貝塚茂樹,島邦男らの殷代暦法,卜法,祭法,氏族制度などの殷代社会に関する諸研究により,甲骨学は文字解読の時代から,政治制度,社会組織など中国古代社会全般の研究を主とする学問に移行してきている。

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世界大百科事典 第2版の解説

こうこつがく【甲骨学 Jiǎ gǔ xué】

甲骨文を研究する学問のこと。甲骨文とは,中国の殷代に亀甲や牛の肩甲骨に文字を彫って記録した文。卜辞,契文ともよぶ。この甲骨文は,1899年(光緒25)に河南省安陽市北西郊の小屯村で初めて発見された。きわめて古い書体の文字であるために学者の注意を引き,以後小屯村一帯で農民による盗掘がたびたび行われ,甲骨文が入手されるとともに,学者などによる収集と研究が行われた。1903年に,最初の甲骨文資料集である劉鶚の《鉄雲蔵亀》が出版され,1058片の資料が紹介された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

甲骨学
こうこつがく

中国、河南(かなん/ホーナン)省安陽(あんよう/アンヤン)県近くのいわゆる殷墟(いんきょ)出土の甲骨片を研究対象とし、殷代文化の解明を目的とする学問。直接には歴史学、考古学の一分科とみるべきであるが、思想史、宗教学、言語学(古文字学を含む)、文化(社会)人類学などにも幅広く関連領域をもっており、独自の研究領域を形成している。1899年に安陽県近くを流れる(えんが)の氾濫(はんらん)により甲骨片が出土し、偶然これを入手した劉鉄雲(りゅうてつうん)によって鋭意収集、解読され、これが殷代の所産であることが判明して、1903年に、1000余片の甲骨拓本を収める『鉄雲蔵亀(ぞうき)』が刊行された。甲骨学にとって最初の刊行物である。その後、孫詒譲(そんいじょう)、羅振玉(らしんぎょく/ルオチュンユイ)らによって解読の業が進められた。さらに王国維(おうこくい/ワンクオウェイ)により、甲骨文は殷代後期の王室によって占われた卜辞(ぼくじ)であって、『史記』殷本紀の記述とよく合致することが明らかにされ、甲骨学の基礎が確立した。
 1928年以降、中央研究院歴史語言研究所によって殷墟が考古学的に発掘されて、多大の成果を得、これによって甲骨学は考古学と深く結び付くに至った。この発掘に参加した董作賓(とうさくひん)により、甲骨文の五期区分法(いわゆる断代研究)が提唱され、その後、多数の研究者の検討によって、細部に問題を残しながらも、大綱は承認されるに至り、これによって、以後、甲骨学は飛躍的に進展した。董作賓、島邦男(しまくにお)らによる殷代王室の祖先祭祀(さいし)体系の復原、殷代暦法の復原などは、いずれもこの断代研究を基礎としている。
 この学をもっとも包括的に体系化したものに陳夢家(ちんぽうか)著『殷墟卜辞綜述(そうじゅつ)』(1956)があり、その章立ては、文字、文法、断代、暦法天象、方国地理、政治区域、先公旧臣、先王先妣(せんぴ)、廟号(びょうごう)、親属、百官、農業その他、宗教、身分とされており、いささか史料内容に密着しすぎているきらいはあるが、おおよそその研究領域を示しているものといえよう。このあと、主要甲骨文の一字索引である島邦男編『殷墟卜辞綜類』(1967)が刊行されてその研究状況は一変した。さらに、1978~83年、従来刊行された多数の甲骨著録(資料集)を網羅したうえで、時代・内容別に整理編集した拓本集『甲骨文合集』全13巻が刊行されるに至り、ようやく研究の基礎条件が整備されることになり、今後の飛躍的展開が望まれる。なお、日本には、1951年(昭和26)以来、日本甲骨学会があり、機関誌『甲骨学』を刊行している。[松丸道雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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