甲骨文字(読み)こうこつもじ(英語表記)Jia-gu wen-zi

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

甲骨文字
こうこつもじ
Jia-gu wen-zi

亀甲,いのしし,しか,水牛の肩甲骨などに彫った中国最古の象形文字。亀甲獣骨文ともいう。占いの結果を小刀で細かい文字で彫りつけた,いわゆる卜辞である。金石学考古学などの貴重な資料であり,漢字の源流である。河南省安陽県小屯村の殷墟から出土する獣骨が大多数であるが,ほかにも分布し,春秋時代のものも発見されている。王懿栄羅振玉らの学者によって研究が進められたが,1937年以後は国立中央研究院歴史語言研究所によって組織的な考古学的発掘調査が行われ,膨大な資料の収集とともに王朝5期区分の提唱などにより飛躍的に解読が進んだ。字体が周代以降の漢字の祖型を示していること,象形,指事会意形声の構成法がみられること,文構造の点でも古典漢文のそれと同じものが多いなど,甲骨文字で書かれた殷代の言語がのちの漢語と歴史的連続性をもつことが明らかにされてきている。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

甲骨文字

殷(商)代後期に使われた文字。中国の学者が1899年、亀の甲や牛骨に文字らしきものが刻まれているのに気づき、研究に着手したという。1928年に始まった殷墟の本格的な発掘でこれまでに4500字以上が発見された。殷墟は06年、ユネスコ世界遺産に登録された。

(2009-12-12 朝日新聞 朝刊 生活1)

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大辞林 第三版の解説

こうこつもじ【甲骨文字】

亀甲きつこうや獣骨に刻まれた中国殷いん代の象形文字。紀元前一五世紀頃から使われたと考えられる、現存最古の中国の文字。占卜の記録に用いられ、殷墟より多数出土。甲骨文。亀甲獣骨文。殷墟文字。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

甲骨文字
こうこつもじ

中国、殷(いん)代で、占卜(せんぼく)に用いた亀甲(きっこう)・獣骨上に小刀をもって刻みつけられた文字。今日知られる最古の漢字である。殷の都址(とし)であった河南(かなん/ホーナン)省安陽(あんよう/アンヤン)県小屯(しょうとん)村を中心に出土し、出土総数10万片を超える。殷王第21代武丁(ぶてい)より第30代末王帝辛(しん)(紂(ちゅう))までのもので、ほぼ紀元前1400年~前1150年の間の産物である。亀甲獣骨文字、殷墟(いんきょ)文字、卜辞(ぼくじ)、殷墟書契(しょけい)、契文と称されることもある。文字数は約2200字、うち1000余字が未解読であるが、このうちには固有名詞などこれ以後消滅した文字が多いため、文章としては大意の明らかなものが多い。宋(そう)代以来、殷周青銅器銘文(金文)の研究蓄積を踏まえて、1899年の発見後、急速に解読され、殷代文化の解明のためにきわめて大きな役割を果たした。なお、別に1977年以降、陝西(せんせい/シャンシー)省岐山県近くの周原において、殷代末期に周族によって占卜された有字甲骨が発見されるに至り、学界の注目をひいている。[松丸道雄]
『白川静著『殷甲骨文集』(1963・二玄社) ▽郭沫若主編『甲骨文合集』(1978~83・中華書局)』

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世界大百科事典内の甲骨文字の言及

【漢字】より

…現在知られるその最古の形は殷墟から出土した亀甲,獣骨に刻せられた文字である。これを殷墟文字または甲骨文字(甲骨文)と呼び,だいたい前1500年くらいといわれる。この文字は多分に絵画的であるが,しかしすでにかなり慣習化され,線条的になっていて,けっしてこの文字の原始状態そのままであるとは考えられない。…

【羅振玉】より

…20世紀初頭の殷墟(いんきよ)や敦煌から発現した新資料の価値をいち早く認識し,その収集と整理に努力してきたが,日本滞在中に《鳴沙石室佚書》《流沙墜簡》をはじめ《芒洛冢墓(ぼうらくちようぼ)遺文》など数多くの資料集を出版した。とりわけ,前・後・続3編の《殷墟書契》は近代的印刷による甲骨文字のはじめての図録集で,その解説《殷墟書契考釈》とともに甲骨学研究の基礎を築いたものである。19年に帰国し,以後は天津に住み宣統廃帝溥儀(ふぎ)の師となり,その間,宮中内閣大庫の明・清時代の文書類(檔案(とうあん))が故紙として流出,廃棄されんとするのを防ぎ,あるいは東方学会を設立するなど,資料保存,学問の基礎作りに貢献した。…

※「甲骨文字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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