六訂版 家庭医学大全科 「卵巣機能低下症」の解説
卵巣機能低下症
らんそうきのうていかしょう
Premature ovarian failure
(女性の病気と妊娠・出産)
どんな病気か
卵巣機能が早期に低下する病態で、
一方、このような状態で卵巣が排卵する能力を完全に失っているかというと、必ずしもすべての人がそうではありません。卵巣に
原因は何か
ほとんどの場合、原因は不明です。
先天的に染色体異常があり、そのために早発卵巣不全になる人が多いことや、甲状腺や
また、卵巣や卵巣の周囲の手術、放射線や抗がん薬の化学療法などによって早発卵巣不全になったり、それ以外の薬剤によっても卵巣機能の低下につながることがあります。
嗜好品と卵巣機能の低下との間にも関連性が考えられており、とくに喫煙によって卵巣機能の低下が起こるとされています。
症状の現れ方
35~40歳で無排卵となり、多くの場合は無月経になります。原因によっては、もっと早期に無月経になることもあります。
無月経になる前の段階として、月経周期が延長した稀発(きはつ)月経の期間があり、この段階ではすでに無排卵になっていることが多く、基礎体温は低温一相性(月経周期に高温期がなく、低温期のまま経過する)となっていることがほとんどです。
検査と診断
卵巣機能が低下していることが証明されれば、早発卵巣不全の可能性が考えられます。この証明には、卵巣からの分泌ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の測定はあまり意味がなく、むしろエストロゲンのフィードバックを受ける脳下垂体からの性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の測定が役立ちます。卵巣機能の低下により、フィードバックを受けなくなった
卵巣に卵胞が残存しているかどうかは、卵巣の組織検査によって診断が可能ですが、実用的ではありません。実際には、ゴナドトロピンの投与で卵胞の発育がみられるかどうかを判断するのが一般的です。
治療の方法
通常の時期に閉経する人に比べ、早期にエストロゲンが欠如することになるので、
エストロゲンが欠如することによって生じる更年期症状については、ホルモン補充療法が必要になります。
妊娠を望む場合は、卵巣に卵胞が残存していることが前提条件になります。ゴナドトロピンの投与による強力な排卵誘発療法で卵巣の反応を観察することが必要ですが、多くの場合、排卵誘発は容易ではありません。
症状に気づいたらどうする
自覚症状は、無月経または稀発月経なので、それぞれの項の対処法に準じます。診断には血液中のゴナドトロピン値の測定が必須なので、専門医による診察が必要です。
関連項目
無月経、稀発月経、頻発月経、卵胞期短縮症、更年期障害、不妊症
久具 宏司
卵巣機能低下症
らんそうきのうていかしょう
Female hypogonadism
(内分泌系とビタミンの病気)
どんな病気か
女性で性ホルモンが低下する疾患群です。二次
原因は何か
卵巣に原因がある高ゴナドトロピン性性腺機能低下症のなかでの最多はターナー症候群です。低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の内容は男性のそれと同様ですが、女性ではとくに分娩時の大量出血に合併するシーハン症候群(
検査と診断
男性の
治療の方法
状態に応じて、周期的な女性ホルモン補充で月経を起こさせるカウフマン療法、ゴナドトロピン補充で排卵を期待するhCGhMG療法などが選択されます。
病気に気づいたらどうする
婦人科受診が第一ですが、低ゴナドトロピン性の場合は内分泌内科の関与が重要です。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報