経緯(たてよこ)とも無撚の生糸を使って織り,製織後に精練して用いる後染(あとぞめ)・後練(あとねり)の紋織物。一般には地を経の五枚繻子(しゆす),あるいは八枚繻子として,文様はその裏組織で織り出す。地質が柔らかく,光沢に富むことを特徴とし,染呉服用の生地として広く活用されている。なお上記の本繻子のほかに,緯糸に強撚糸を用いて皺(しわ)を出した綸子縮緬(ちりめん),四枚変化綾組織による平綸子などがある。日本での綸子は,慶長年間(1596-1615)西陣で中国の織技にならって織り始められたと伝えられている。しかし桃山から江戸初期(16世紀後半~17世紀)にかけて中国製の綸子が多量に輸入され,これが将軍家への献上品としてもしばしば用いられたことの記録がある。また一般に慶長裂(ぎれ),慶長小袖と呼ばれているものをはじめ,江戸初期の小袖類には綸子地のものが多いが,当時これが高級織物の筆頭とされていたことは,1666年(寛文6)の衣服禁令で一般武士階級の綸子着用は法度(はつと)とされていたことからも明らかである。当初は京都が主産地であったが,江戸中期ころには桐生でも製織されるようになる。現在では石川県小松市から産出される綸子が,小松綸子の名で著名であるが,京都府京丹後市,および新潟県五泉市でも製織されている。
→緞子(どんす)
執筆者:小笠原 小枝
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白絹の紋織物。経糸(たていと)・緯糸(よこいと)に無撚(よ)りの生糸を使用し、表朱子(しゅす)と裏朱子による昼夜組織によって柄模様をつくる。石川県小松地方が主産地であり、主として白生地(きじ)のまま、女性礼服の白無垢(むく)や、裏地に使われる。経糸は21デニール2本引きそろえ生糸使い、緯糸は21デニール3本引きそろえ生糸使いが多く、柄出しはジャカード機を使って生産する。また、強撚糸(ねんし)を使った綸子縮緬(ちりめん)もある。
[並木 覚]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…ことに江戸時代初期のころは,はっきり区別され,支配者である武士社会の内部でも将軍,大名から下士,若党にいたるまで数多くの段階にわかれ,町人社会も大店(おおだな)の主人と番頭と手代,職人は棟梁(とうりよう)と弟子,農民は地主と自作と小作など,それぞれ服装に相違があった。たとえば白無垢(しろむく)の肌着は四位以上,それも大名は嫡男とかぎられ,熨斗目(のしめ)(腰に横縞または縦横縞のあるもの)は身分ある武士の式服であり,綸子(りんず)は一般武士には許されないなどである。地質(じしつ)の順位は綸子,羽二重(はぶたえ),竜文絹,二子(ふたこ)絹,紬(つむぎ)の順で,以下,麻および木綿となる。…
※「綸子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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