古稀(読み)こき

故事成語を知る辞典 「古稀」の解説

古稀

七〇歳のこと。

[使用例] その年の正月にはおくればせながら父も古稀の祝いを兼ねて、病中世話になった親戚知人のもとへしるしばかりのを配ったほど健康を回復した[島崎藤村夜明け前|1929~35]

[由来] 八世紀、唐王朝の時代の中国の詩人の詩の一節から。戦乱の中で家族と離れ離れとなり、反乱軍に制圧された都で暮らしていた杜甫は、衣服を質に入れて酒を飲んでばかりいました。そして、「酒代の借りはそこらじゅうにあるが、『人生七十、古来まれなり(どうせ人間なんて、めったに七〇歳まで生きやしないのだから、今を楽しむしかない)』」と、世の中の乱れにすさんだ気分を吐き出しています。このとき、杜甫はまだ四〇代の半ばでした。

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普及版 字通 「古稀」の読み・字形・画数・意味

【古稀】こき

七十歳。唐・杜甫〔曲江、二首、二〕詩 (てう)より回(かへ)りて、日日春衣を典(てん)(質入れ)す 日江頭にを盡して歸る 酒債常行處にり 人生七十、古來稀なり

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改訂新版 世界大百科事典 「古稀」の意味・わかりやすい解説

古稀(希) (こき)

70歳,またはその祝いのこと。民間でいう年祝の一つであり,長寿祝の算賀賀寿,〈賀の祝い〉の一種でもある。古代上流社会では40歳以上を10歳ごとに祝ったが,後に61歳の還暦,88歳の米寿などに変遷したのに対し,70歳の古稀のみ存続した。〈人生七十古来稀〉という説明が,強い印象を与えるからであろう。この句は,杜甫(とほ)の詩の一節である。祝いには,祝宴贈答がなされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「古稀」の意味・わかりやすい解説

古稀
こき

70歳の年祝いをいう。中国の杜甫(とほ)の「曲江(きょくこう)」の詩にある「人生七十古来稀」の語句に基づく。還暦以後の年祝いはとくに異なったことは見当たらない。着物、座ぶとんを贈り、祝宴を開くことが一般に行われており、杖(つえ)を贈ることもある。香川県小豆(しょうど)島では70の祝いに大餅(おおもち)2個を贈るという。王朝時代の公卿(くぎょう)の年祝いには屏風(びょうぶ)を調進し、屏風絵、屏風歌をかいて祝いの席に立てる風習があった。70の賀をまた懸車(けんしゃ)の齢(れい)ともいった。これは中国の『漢書(かんじょ)』に、薛広徳(せつこうとく)が70の高齢で丞相(じょうしょう)の職を辞したとき、皇帝より老人用の車を賜ったとある故事に基づいたという。

[大藤時彦]

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百科事典マイペディア 「古稀」の意味・わかりやすい解説

古稀(希)【こき】

70歳のこと。あるいは70歳に達したことを祝う儀礼。杜甫の《曲江詩》にある〈人生七十古来稀〉の句にちなむ。長寿の祝は,古くは40歳から始めて10歳ごとに行われたが,中世以降すたれて70歳だけが残ったもの。現在も,中世以来盛んになった還暦,喜寿,米寿などとともに祝われる。→年祝

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とっさの日本語便利帳 「古稀」の解説

古稀

中国唐代の詩人・杜甫がつくった「曲江詩」の中にある「人生七十古来稀(人生七十、古来稀なり)」によって、七〇歳を古稀(古希とも)と称し、祝宴を開く。長寿の祝いは、従来は数え年でしたが、最近は還暦を除いて満年齢ですることが多くなった。

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世界大百科事典(旧版)内の古稀の言及

【年祝】より

…通過儀礼の一つ。数え年61の還暦,70の古稀,77の喜寿,88の米寿,99の白寿などの〈長寿の祝い〉を総称して賀寿,賀の祝い,あるいは算賀というが,庶民の間ではこれを年祝と呼ぶことが多い。つまり以上の〈長寿の祝い〉が年祝の典型である。…

※「古稀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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