(読み)イニシエ

デジタル大辞泉 「古」の意味・読み・例文・類語

いにし‐え〔‐へ〕【古】

《「にし」の意》
過ぎ去った古い時代。過ぎ去った月日。昔。過去。「の都の姿をとどめる」
亡くなった人。故人
「―の御許しもなかりし事を」〈・宿木〉
[類語]一昔過去以前かつ在りし日往年往時往日旧時昔日せきじつ昔時せきじ昔年せきねん往昔おうせき往古古昔こせき古くそのかみ当時前前かねてかねがね何時か既往これまで従来従前し方先年当年一時一頃その節先に当時古来あらかじめ前以て年来旧来在来その昔太古千古大昔

こ【古】[漢字項目]

[音](漢) [訓]ふるい ふるす いにしえ
学習漢字]2年
〈コ〉
ふるい。ふるびている。「古書古色古木最古新古
いにしえ。むかし。「古人古代古典古風古来往古懐古尚古太古復古
〈ふる(ぶる)〉「古株古巣中古
[名のり]たか・ひさ・ふる
[難読]反古ほご

ふる【古/故/旧】

使い古したこと。また、そのもの。「父のお―のシャツ」→御古おふる
名詞の上に付いて複合語をつくる。
㋐古いこと、また、使い古したことを表す。「―だぬき」「―新聞」「―靴」
㋑以前のものの意を表す。「―巣」
[類語]過去以前かつ在りし日往年往時往日旧時昔日せきじつ昔時せきじ昔年せきねん往昔おうせき往古古昔こせきいにしえ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「古」の意味・読み・例文・類語

いにし‐え‥へ【古・往古】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「往(い)にし方(へ)」の意。時間の経過を観念にもつ )
  2. しい以前。過ぎ去った時。往時。
    1. [初出の実例]「劔太刀いよよ研ぐべし伊尓之敝(イニシヘ)ゆさやけく負ひて来にしその名そ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四六七)
  3. 過去の事。過去の事跡。過去の経歴
    1. [初出の実例]「淡海の海夕浪千鳥汝が鳴けば情(こころ)もしのに古(いにしへ)思ほゆ」(出典:万葉集(8C後)三・二六六)
  4. 亡き人。故人。
    1. [初出の実例]「いにしへの御許しもなかりし事を。かくまで漏らし聞ゆるも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)

古の語誌

( 1 )「いにしえ」と「むかし(昔)」とは同じ意味にも用いられているが、しかし、基本的にはとらえ方に違いがあるとみられる。「いにしえ」は、「往にし方」の原義が示すように、「時間的」にものをとらえる場合に用いて「今」と連続的にとらえられるのに対して、「むかし」は、そのような「過ぎ去る」という時間的経過の観念が無く、「今」とは対立的に過去をとらえる場合に用いる。
( 2 )語源的には、「過ぎ去った昔」の意で、直接に体験していないはるか以前について使われることが多い。これに対して「むかし」は、奈良平安時代を通して、直接体験した懐かしく、忘れがたい、近い過去を多く意味した。
( 3 )鎌倉時代以降になると、はるか以前を意味する「むかし」が急増し、「いにしへ」の意味領域を侵していった。


ふるく【古】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 形容詞「ふるい」の連用形から ) 昔に。ずっと前に。また、昔から。以前から。
    1. [初出の実例]「右近が、ふるく知れりける人の、殿の御供にてたづね出でたる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ずっと前。昔。
    1. [初出の実例]「袈裟はふるくより解脱服と称す」(出典:正法眼蔵(1231‐53)袈裟功徳)

ふるび【古】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ふるびる(古━)」の連用形の名詞化 ) 古びていること。また、古くさいと感じられるような、物のさま。
    1. [初出の実例]「玉まつり、尤の意味ながら、此分にては古びに落可申候」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)先師評)
    2. 「紙の古びから、二百年から上のものと見える」(出典:滑稽本・古朽木(1780)四)

ふるし【古】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙ふるしい(古)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「古」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音]
[字訓] いにしえ・ふるい

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
十(干(たて))+口。口は(さい)。祝詞などを収める器の形。その器を、聖器としての干で固く守護し、久しくその祈りを機能させようとした。それで先例旧慣の意となり、久古の意となる。〔説文〕三上に字を十口の会意とし、「故なり。~言をなり」という。〔伝〕には多くの人による伝承の意に解するが、古事をいう。古に攴を加えて、その呪能を害することを故といい、事故・災厄を意味する。卜辞に「王の舌を疾(や)めるは、隹(こ)れ古(こと)(故(ゆゑ))(あ)るか」と古を故の意に用い、また金文に「古(故)に」のようにいう例がある。故の形義を以ていえば、古が固閉された祝告・盟誓の意であることは疑いがない。〔説文〕に録する古文の字形は、中におけるその儀礼を示すものであろうと思われる。

[訓義]
1. ふるくからのもの、典故とすべきもの、いにしえ、むかし。
2. ふるい、はじめ、もと、久しい。

[古辞書の訓]
名義抄〕古 イニシヘ・ヨヨ 〔字鏡集〕古 イニシヘ・ヒサシ

[部首]
〔説文〕〔玉〕に(か)をこの部に属する。〔詩、魯頌、宮〕の「純(じゆんか)」を、金文に「屯」に作り、また「休」などの語がある。は「瑕玉」の意であるから、古を加えることによって、(さいわい)の義が完成されるわけである。

[熟語]
古意・古佚・古逸・古印・古韻・古塋・古駅・古苑・古園・古遠・古往・古奥・古屋・古音・古雅・古瓦・古画・古雅・古怪・古格・古楽・古歓・古・古鑑・古玩・古巌・古稀・古記・古器・古誼・古義・古丘・古旧・古邱・古興・古鏡・古曲・古玉・古訓・古勁・古経・古碣・古賢・古憲・古言・古・古語・古香・古国・古今・古史・古始・古詩・古辞・古字・古寺・古事・古時古式・古質・古者・古酒・古戍・古樹・古処・古書・古初・古松・古称・古色・古人・古制・古昔・古迹・古蹟・古拙・古刹・古先・古阡・古銭・古甎・古俗・古体・古代・古淡・古注・古籀・古冢・古調・古典・古伝・古都・古渡・古・古藤・古道・古農・古梅・古碑・古筆・古風・古物・古仏・古墳・古文・古法・古貌・古木・古朴・古穆・古味・古銘・古来・古流・古陵・古林・古塁・古隷・古暦・古烈・古路
[下接語]
按古・援古・遠古・往古・懐古・学古・簡古・古・奇古・擬古・古・今古・近古稽古好古・考古・高古・曠古・最古・師古・終古・循古・尚古・上古・振古遂古古・千古・先古・前古・蒼古・尊古・太古・中古・通古・道古・篤古・万古・復古・変古・放古・訪古・覧古

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岩石学辞典 「古」の解説

地質学では古いことを意味している接頭語.最も普通の例では古生代(Palaeozoic)で生命の古い形を意味している.同様に変質した岩石または鉱物の記述にも使用され,palaeopicrite, palaeoamphiboleなどの例がある.地質学的な過去の特定の状態にも用いられ,古磁気(palaeomagnetism),古気候(palaeoclimatology)などの例がある.ギリシャ語のpalaiosは古いという意味.

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【印章】より

…【新 規矩男】
【中国】
 中国の印章はきわめて古い時代から現在までひきつづいて使用され,その制度は周辺の諸民族にも受容されている。歴史的には大別して(1)戦国以前の古(鉩)(こじ),(2)漢代を中心に秦,および魏・晋にいたる漢印,(3)隋・唐以後の印にわかれる。
[古
 古の最古のものは殷墟から発掘された三つので,銅製,平板環鈕,印面に記号のような陽文の文字があるが,この時代の印章がどの程度用いられたかは明らかでない。…

※「古」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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