北海道中央部北寄りに位置する市。1956年(昭和31)市制施行。2006年(平成18)、上川(かみかわ)郡風連町(ふうれんちょう)を合併。名寄盆地の中央部を占め、東部は北見山地、西部は天塩(てしお)山地である。市街は天塩川とその支流名寄川の合流点付近に広がる。JR宗谷(そうや)本線が通り、国道40号、239号が走る。地名はアイヌ語ナイオロプト(川の口の意で、名寄川合流点を表す)に由来する。市街地は開拓期から名寄盆地一円の中心都市として計画されたもので、1900年(明治33)の団体入植に始まり、1903年旭川(あさひかわ)との間の鉄道が開通して急速に発展した。水田開拓も1910年ごろから進み、第一次世界大戦後、盛んに大規模造田が行われた。一時は盆地床の大部分は水田地帯となったが、現在水田のなかばは畑地化され、残った水田では糯米(もちごめ)を生産している。北部の智恵文(ちえぶん)台地などでは畑作と酪農が行われる。畑作物はジャガイモ、アスパラガス、サトウダイコン、豆類など。市街には乳業、製紙、製材などの工場があり、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の薬用植物資源研究センター北海道研究部がある。市街に近い丘陵地の緑が丘からは鈴石(すずいし)、有利里(うりり)からは沼鉄鉱高師小僧(たかしこぞう)を産し、いずれも国の天然記念物に指定されている。智恵文沼にはヒブナが生息する。北東のピヤシリ山(987メートル)は山頂のハイマツの群生と雄大な眺望で知られ、スキー場がある。面積535.20平方キロメートル、人口2万7282(2020)。
[岡本次郎]
『『名寄市史』(1971・名寄市)』
名寄ということばは名称の羅列という意味で、一般的に名所名寄、美人名寄などと使うが、能楽用語では、能および狂言における曲目一覧表をいう。能名寄、謡名寄、狂言名寄などがあり、曲柄順、五十音順、入門・大習(おおならい)・一子相伝といった稽古(けいこ)の段階順、謡本の組合せ別、作者別など、各種分類されているのが普通である。江戸時代には、幕府あるいは藩主に対する各流のレパートリーの申告書であった。現代の上演曲目は入場税の関係で税務署に届けられるために、申告以外の曲目、たとえば世阿弥(ぜあみ)時代の古い曲の復元や新作能の上演には、重要無形文化財指定の出演者を網羅した場合の免税特典もなくなり、他の古典芸能より厳しい扱いを受けている。
[増田正造]
北海道北部の市。2006年3月旧名寄市と風連(ふうれん)町が合体して成立した。人口3万0591(2010)。
名寄市北部の旧市。1956年市制。人口2万6590(2005)。名寄盆地の中心地で,天塩川と支流名寄川の合流点に市街が発達する。地名はアイヌ語の〈ナイオロ・プトゥ(名寄川の口)〉に由来する。1900年士別~名寄間の道路が開通し,山形県人らの集団移住により開拓が始まった。03年鉄道(現,JR宗谷本線)が旭川から名寄まで開通,農産物や木材を鉄道によって本州や道央・道南の市場に供給できるようになった。その後木材・木製品,食料品などの製造業が盛んになった。国道40号,239号線が通る。米,ジャガイモ,テンサイ,野菜などをおもに産し,酪農も行われる。市街地近くに国立衛生試験所北海道薬用植物栽培試験場(現,独立行政法人の医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部)がある。北東のピヤシリ山(987m)は頂上のハイマツの群生と利尻富士,大雪連峰の雄大な眺めで知られる。名寄高師小僧(天),名寄鈴石(天)などの石を産する。
名寄市南部の旧町。上川支庁の旧上川郡所属。人口5038(2005)。地名はアイヌ語の〈フレ・ペッ(赤い・川)〉に由来する。名寄盆地中央部を占め,JR宗谷本線,国道40号線が通じる。最初に入植が行われたのは1898年ころといわれるが,本格的な開拓は鉄道(宗谷本線)が南に接する士別まで開通した1900年以降である。明治末期には灌漑・排水事業により泥炭地の水田化が行われた。米作が主体であるが,ユリ根,ジャガイモ,タマネギなどを多く産する。町域西部に雨竜発電所がある。
執筆者:奥平 忠志
一般に人や物や所などの名をある類別に従って集め記したものをいう。《枕草子》《尤草紙(もつとものそうし)》や,歌謡などに見られる〈物づくし〉〈物ぞろえ〉に形式的には類似するが,名寄は,ある分野の名称についての知識を集成するという目的で作られ,実用的なものが通常であると思われる。歌枕を集めた書に,《歌枕名寄》,《大名寄》(《類字名所和歌集》),《小名寄》(《名所類字和歌》)などの称があり,また,能狂言の曲名を列記したものを能名寄,謡名寄,狂言名寄などといい,《旧謡いろは名寄》《謡名寄》などの書名のものがある。人名についても,《誹諧作者之名寄》などと用いられている。なお,中・近世の,地主とその占有する田畑の反別などを記した名寄帳のことも省略して名寄という。
執筆者:石川 八朗
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