旧「人事訴訟手続法」(明治31年法律第13号)に設けられていた、離婚または離縁訴訟において、夫婦または養親子が和合して、婚姻関係または養子縁組関係を従前どおり維持し、あるいは円満に協議離婚または協議離縁をするために、仲直りする合意をいう(同法13条、26条)。和諧が調うと、これに基づいて原告が離婚または離縁の訴えを取り下げることにより、それらの訴訟は終了する。旧人事訴訟手続では、それらの訴訟の係属中、当事者間に和諧の調うべき見込みのあるときは、裁判所は職権をもって1回に限り1年を超えない期間、離婚または離縁の訴えに関する手続を中止させることができた。当事者が訴え提起後に、冷静となり感情が融合して、婚姻や養親子関係を維持できるようになりそうなときでも、法廷で相争っていては、とうてい和合は実現しがたいとみられるので、状況により、裁判所に訴訟手続を中止しうる権限を認めたものであった。しかし、受訴裁判所はこの種の事件をいつでも家庭裁判所の調停に付して、その間訴訟手続を中止することができたから(旧家事審判法19条1項、旧家事審判規則130条)、和諧のために手続を中止することは、きわめてまれといわれていた。
2003年(平成15)に人事訴訟手続法は廃止され、これにかわるものとして「人事訴訟法」(平成15年法律第109号)が制定された。この人事訴訟法では、離婚または離縁の訴えにつき訴訟上の和解が可能であるとともに(人事訴訟法37条1項本文、44条)、旧人事訴訟手続法当時と同様に調停に伴う訴訟手続の中止は「家事事件手続法」(平成23年法律第52号)によって可能であるため(同法275条1項)、人事訴訟法には和諧に関する規定は設けられていない。
[内田武吉・加藤哲夫 2016年5月19日]
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…また,訴訟上の和解に無効や取消原因がある場合のその主張方法,また解除事由があって解除した場合のその後の処置については,学説上見解が対立している。 なお,以上の和解と似て非なるものに和諧がある。これは,離婚訴訟の当事者が婚姻を維持するためまたは円満に協議離婚するため仲直りすることをいう(人事訴訟手続法13条)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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