四面楚歌(読み)しめんそか

四字熟語を知る辞典「四面楚歌」の解説

四面楚歌

敵の中に孤立して、助けのないこと。周囲、反対者ばかりで味方のないことのたとえ。

[使用例] 主君の不人気が彼の所領の人を四面楚歌におとしいれたこともたしかであろう[尾崎士郎*人生劇場|1933]

[使用例] 秋水は殊に、入獄中の若い同志の妻を寝取ったという非難とあくの中に立たされ、続々、同志に離反され四面楚歌の立場に追いこめられていたから、是が非でも、寒村の同意書を必要としたのだった[瀬戸内晴美*遠い声|1970]

[使用例] 五月七日、ついにドイツは敗北した。〈略〉おなじころ沖縄では、日米両軍および沖縄在住の非戦闘員が、吹きすさぶ鉄と血の嵐に翻弄されていた。四面とは、このことである[辻真先*あじあ号、吼えろ!|2000]

[解説] 秦代末期の武将・項羽と劉邦の戦いは、歴史書「史記」に描かれています。項羽が劉邦に敗れる場面で出てくるのが「四面楚歌」のエピソードです。
 項羽が率いる楚の軍隊は劣勢となり、がいの地に追い詰められます。兵の数は少なく、食糧も尽きました。周囲は劉邦の漢軍にいくにも囲まれています。
 夜になって、四面(周囲)の漢軍の中から楚の国の歌が流れてきました。項羽は大いに驚き、敗北を覚悟します。
 「漢はすでに楚を手に入れたということか。歌う楚人の何と多いことだろう」
 味方の歌が聞こえたのだから、援軍が来た――わけではなく、楚の民衆が漢に寝返ってしまった、自分たちは完全に孤立化した、と項羽は悟りました。
 現代、「四面楚歌」は孤立無援の状態を表します。四面から歌が聞こえれば楽しそうですが、実はつらく苦しい意味です。文字から受ける印象と、実際の意味とにギャップのあることばです。

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デジタル大辞泉「四面楚歌」の解説

しめん‐そか【四面×楚歌】

項羽高祖に敗れて、垓下(がいか)で包囲されたとき、夜更けに四面の漢軍が盛んに楚の歌をうたうのを聞き、楚の民がすでに漢に降伏したと思い絶望したという、「史記」項羽本紀の故事から》敵に囲まれて孤立し、助けがないこと。周囲の者が反対者ばかりであること。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「四面楚歌」の解説

四面楚歌
しめんそか

敵に囲まれて孤立し、助けを求められないことのたとえ。周りに味方がなく、周囲が反対者ばかりの状況をもいい、孤立無援ともいう。中国、楚(そ)の項羽(こうう)が、漢の高祖に敗れて垓下(がいか)でその軍に包囲されていたとき、四方を取り囲む漢の軍中で盛んに楚の歌を歌うのを聞いて、「漢皆已(すで)に楚を得たるか、これ何ぞ楚の人の多きや」といって、敵の軍中に楚人の多いのを嘆じた、と伝える『史記』「項羽本紀」の故事による。しかしこれは、高祖の仕組んだ心理的な計略であった。

[田所義行]

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精選版 日本国語大辞典「四面楚歌」の解説

しめん‐そか【四面楚歌】

〘名〙 (楚の項羽が漢の高祖に垓下(がいか)で包囲されたとき、四面の漢軍の中から楚国の歌がおこるのを聞いて、楚の民がもはや多く漢軍に降服したかと思って驚いたという「史記‐項羽本紀」の故事から) 敵の中に孤立して、助けのないこと。周囲が敵、反対者ばかりで味方のないことのたとえ。楚歌。
※和漢朗詠(1018頃)下「燈(ともしび)暗うして数行虞氏が涙、夜深けぬれば四面楚歌の声〈橘広相〉」 〔呉志‐胡綜〕

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世界大百科事典内の四面楚歌の言及

【垓下の戦】より

…〈垓下の歌〉を作り,天に見放された不運を嘆き,愛馬の騅(すい)と虞美人(ぐびじん)の行く末を案じたあと,奮戦してみずから命を絶った。〈四面楚歌〉はこの故事にもとづく。【上田 早苗】。…

【虞美人】より

…5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか)(安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。…

【楚歌】より

…漢代初年に広く流行した。項羽が漢の高祖と天下を争い,垓下(がいか)に包囲されたとき,包囲軍が〈四面楚歌〉したとあるように,元来は民衆的な流行歌謡であったと考えられるが,現在にのこるのは英雄や皇帝,皇族たちの作品とされるものが多い。項羽の〈垓下の歌〉,漢の高祖の〈大風の歌〉,戚夫人の〈永巷の歌〉〈舂歌(しようか)〉など,みな高ぶった感情を表現したものである。…

※「四面楚歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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