図師(読み)ずし

世界大百科事典 第2版の解説

ずし【図師】

古代,中世における国衙の臨時の職務の一つ,およびその担当者。平安時代には,擬主帳,権大掾,判官代といった官名などからみて,郡司クラスが任じられていたとみられる。そして〈当郡図師僧〉とか〈郡図師〉と史料にあるように,ほぼ郡単位に図師が存在して,国衙の下知に従っていたと考えられる。鎌倉時代に入ると,荘園の給免田にも図師給が設定され,下級の荘官職の一つとして図師職が現れる。彼らは田畠などの所在を熟知し,主として土地支配の台帳類の作成などにあたった。

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大辞林 第三版の解説

ずし【図師】

指図すること。また、その人。
古代・中世、国郡・荘園の図帳や田図を作製する国衙の技術者。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

図師
ずし

古代・中世、国衙(こくが)や荘園で図帳・検注帳の作成に関わる下級役人・荘官。本来は、令(りょう)に規定された田図・田籍を作成する技術者であったが、平安時代にはすでに作図技術者としての性格はなくなり、坪付・検注等の作成・使用に関与する技術的補助員。12世紀前半を中心に、史料的には「安八郡古老図師僧」「当郡図師僧」などとみえ、国衙機構、とくに郡に属し活動していた。また、「図師擬主帳(ぎのさかん)」「図師判官代(ほうがんだい)」「図師権大掾(ごんのだいじょう)」などといった官名などから郡司クラスが任命されたと考えられる。12世紀後半から13世紀になると、荘園内に給免田(きゅうめんでん)として図師給が設定され、下級荘官職の1つとして図師職(ずししき)が現れる。図師は、田畠などの所在を熟知しており、国衙機構の下級役人として、土地支配の出発点ともいうべき検注作業に参加した。保元3年(1158)5月10日の山城国安祥寺辺田畠在家検注帳案(勧修寺文書)には、「検注図師内蔵助元」などが、国使・郷司らとともにみられ、実際の検注作業を担当した。また、荘園の立券においても、図師は荘民とともに四至内の田畠・在家・栗林の所在確認などを行い、立券の際の重要な役割を担っていた。しかし図師職の成立によって、図師の地位は得分化し、次第に姿を消していった。室町時代以降、『庭訓往来(ていきんおうらい)』にみられるように、指図する者・手引きする者という意味に用いられるようになった。[松井吉昭]
『田中寿朗著「平安・鎌倉時代の図師」(竹内理三編『荘園絵図研究』所収・1892・東京堂出版)』

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