国と地方自治体との公権力行使をめぐる争いを公平・中立的立場で調整する第三者機関。地方分権一括法(地方自治法第250条の7)に基づき、2000年(平成12)に総理府(現、総務省)内に設置された。調整対象は、自治体の行政事務に対する国の是正要求や、自治体が許可した案件に対する国の拒否(不同意)など、国の公権力行使に自治体が不服のある場合である。不服がある場合、国の公権力行使の日から30日以内に自治体は国地方係争処理委員会に文書で審査を申し出る。同委員会は申し出があった日から90日以内に審査を行い、国の関与が不当または違法と認められる場合、国の行政機関に勧告し、自治体に通知すると同時に公表しなければならない。審査結果に不服のある自治体は、国の行政機関を被告として、高等裁判所に訴えることができる。国地方係争処理委員会は有識者ら5人の委員の合議制で、委員は衆議院・参議院両院の同意を得て総務大臣が任命する。委員の任期は3年。委員長は委員の互選で決める。
国地方係争処理委員会への審査申立ては、2016年3月時点までで3件にとどまる。2001年、場外馬券売場への独自課税に総務省が同意しなかったことに対する横浜市の申立てについて、同委員会は国へ再協議を勧告した。これを受け、総務省は横浜市との協議を再開したが、横浜市は2004年2月に、独自課税を断念した。北陸新幹線の追加工事を国土交通省が認可して地元負担が増えた新潟県の申立て(2009)と、アメリカ軍普天間(ふてんま)飛行場の沖縄県内への移設に関する政府対応を是正しようとした沖縄県の申立て(2015)については、同委員会は審査対象外であるとして却下した。このため自治体関係者などから、国地方係争処理委員会は国と自治体間の係争を処理する機関として事実上機能していないとの批判が出ている。なお自治体間(都道府県と市町村)の争いを調整する第三者機関に自治紛争処理委員がある。
[矢野 武 2016年7月19日]
(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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