戦前日本の戦時統制経済の展開過程に設立された半官半民の企業形態。とくに日中戦争期に多く設立されたが、各種の統制法規に関係している点に特色があった。電力管理法などに基づく日本発送電株式会社、石炭配給統制法に基づく日本石炭株式会社などがそれである。重要物資の生産・配給の一元化を図るために、政府が役員の決定権をもつなど、まさに国家独占資本主義における国家の経済介入を典型的に示すものであった。しかし太平洋戦争期に入ると、政府や軍部はこのような企業形態に満足することができず、より直接的な形で、つまり政府機関の一部ともいうべき営団、金庫という企業形態を採用するに至った。このほか、植民地や占領地での開発・支配の機関として、法律によって設立された北支那(しな)開発、中支那開発、台湾拓殖、樺太(からふと)開発などの諸株式会社をはじめ、大日本航空、東亜海運といった特殊会社も国策会社の一種といえよう。第二次世界大戦終結とともに、これら国策会社の多くは解体されるか、特殊会社に指定されたが、国策会社を母体として、戦後に発展した私企業も存在する。なお、2004年(平成16)まで存続していた帝都高速度交通営団(営団地下鉄)は同年4月に民営化されて東京地下鉄株式会社(東京メトロ)となり、日本では営団はなくなった。
[加藤幸三郎]
国の政策を遂行するため単独の特別法によって設立された会社。政府の出資をうけ,政府の厳重な指導監督下で利益を度外視して公益を優先する。生産力拡充を課題として経済統制が進んだ日中戦争期以降設立が増加した。生産力拡充のための日本製鉄,経済統制のための日本石炭,植民地開発のための南満州鉄道・東洋拓殖,その他日本通運・国際電気通信などがある。日本銀行などの特殊銀行も含まれることがある。第2次大戦後多くは閉鎖機関に指定された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…1931年4月に制定された重要産業統制法は,この時期の典型的な統制法規であり,同時に制定された工業組合法とともに,強制カルテル化という独占的組織の強化によって不況の克服をはかろうとした。類似の立法はイタリアやドイツにもみられたが,日本はむしろその先駆をなし,このような企業統制の強化は,やがて半官半民の形態をとる多くの国策会社の設立にもつながる。1934年1月に設立された日本製鉄株式会社もその一つである。…
※「国策会社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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