地域社会(読み)チイキシャカイ(英語表記)community

翻訳|community

デジタル大辞泉 「地域社会」の意味・読み・例文・類語

ちいき‐しゃかい〔チヰキシヤクワイ〕【地域社会】

ある一定の地域に、共通した社会特徴をもって成立している生活共同体コミュニティー

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精選版 日本国語大辞典 「地域社会」の意味・読み・例文・類語

ちいき‐しゃかいチヰキシャクヮイ【地域社会】

  1. 〘 名詞 〙 ある限られた範囲土地に成立している生活共同体。また、人間共同生活の行なわれる一定の地域。コミュニティ
    1. [初出の実例]「閉鎖的な地域社会へ、調査というような目的で外からの来訪者がある場合」(出典:文学の根本問題(1958‐59)〈中島健蔵〉一二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地域社会」の意味・わかりやすい解説

地域社会
ちいきしゃかい
community

一定の地域的範域において形成される人々の社会生活のまとまりをいう。地域社会の範域としては、一つには、居住の場、消費の場としての家族集団を中心とした近隣関係を、いま一つには、居住の場や消費の場だけではなく、生産労働の場としての企業体とか事業所や、余暇活動の場としての盛り場などを含んだものを考えることができるといえよう。

 もとより、一時代前の人間の暮らしのように、消費生活や生産労働や余暇活動などの営みが家族や村社会の人々と同一地域でなされていたときには、これらの活動の場は重なっていたのであるが、しだいしだいに、生産労働や余暇活動の場が家族や村社会から離れて、別の場所で、別の社会関係のもとで営まれるようになると、地域社会の理解や把握においても、消費生活の場面に力点を置くものと、生産労働や余暇活動の場を含めて理解するものとに分かれてくる。このようにみてくると、地域社会の理解においても、何百年とか何世代にもわたって自然発生的、自生的に形成されてきた村的結合と、流動し移動する人々が一定地域に定住し、共住することを契機として、すこしでも住みよい街づくりへとお互いが努力し、取り組んでいくなかでつくられていく地域的まとまりとを、一つにくくってとらえるというのは妥当ではない、ということになるであろう。

 地域社会のうちにも、村社会や生まれ故郷とかいった「生み込まれる」という色彩が濃いものと、住民合意連帯や共同の活動のなかから「つくられる」という性格の強いものとの二つがあわせ存在しているのである。それゆえ、今日、そして今後の日本における地域社会というものを考える場合には、それを自然発生的、自生的な地域的なまとまりであると理解するよりも、共通の目標関心をもつ人々が意識的、計画的につくりあげていくものだととらえるほうがより適切で妥当であろう。

[園田恭一]

『園田恭一著『現代コミュニティ論』(1978・東京大学出版会)』『蓮見音彦・奥田道大編『地域社会論』(1980・有斐閣)』

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改訂新版 世界大百科事典 「地域社会」の意味・わかりやすい解説

地域社会 (ちいきしゃかい)

一定の地域の人間関係によって結ばれる社会。地縁を契機として形成される社会であることから,〈地縁社会〉ともいう。かつて地域社会は,そこに居住する人びとの生活様式生産様式,意識,態度などによって,他の地域とは異なる社会的特徴をもっていた。すなわち,農山漁村,都市はそれぞれ異なった社会性のもとに地域社会を形づくっていたのである。たとえば農村は生産と生活の場とが一致し,職業の分化はそれほどみられず,ある程度の自給自足性をもっていることが社会的特徴といえた。農村に比べて都市では,生産と生活の場を分ける多くの人びとが存在し,さまざまな職業が一定地域に混在しており,人口移動も激しいことに特徴があった。

 しかし,日本では,1960年代以降急速に地域社会がその様相を変えた。高度経済成長期を契機として,工業化,都市化が全国に及び,伝統的共同体を急速に崩壊させたのである。この地域社会の変化は,農村においてとくに著しく,専業農家の激減,機械化,過疎化など生産様式や意識に大きな影響を与えた。このように社会全体の人口移動が盛んになるにしたがって,地域間に社会的特徴はほとんどみられなくなり,斉一的な社会を生み出すことになった。すなわち,都市的生活様式や意識が日本全体に広がったのである。この斉一性に対する疑問は,高度成長期の見直しと同時に,失われつつある地域社会を意識させるにいたった。1971年から3ヵ年の時限政策として自治省主導によるモデル・コミュニティ設定はその先駆けであった。その後,〈地方の時代〉〈コミュニティづくり〉などのスローガンとともに,地域社会再形成への機運が高まってきた。また,日照権や公害などの社会問題,幼児・児童あるいは老人の福祉問題などの現出は,住民の地域に対する意識を高め,住民自治による地域社会形成の動きを生み出してきた。このように近代化の過程で生じた個人の地域社会からの解放は,その社会的特徴の喪失の結果,かえって地域社会を強く意識させるにいたったといえよう。
コミュニティ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地域社会」の意味・わかりやすい解説

地域社会
ちいきしゃかい
community

共同社会,地域社会と訳されるが,この用語の概念規定は数多くあるが,包括的な概念はないといえる。最初に学問的に使用したのは R.M.マッキーパーで,アソシエーションの対概念としてとらえ,「共同生活が営まれているあらゆる地域,または地域的基盤をもったあらゆる共同生活」と定義づけた。その後,幾多の実証的研究を経て,多くの研究者によって再規定が行われているが,今日では社会計画の有力な手段の一つとしてのコミュニティー形式という実践的概念として用いられることが多い。それを操作的に定義すれば「地域社会という生活の場において市民としての自主性と主体性と責任を自覚した住民により,共通の地域への帰属意識と人間的共感と共同利害をもって具体的な共通項目に向い,それぞれの役割をにないながら共通の行動をとろうとする態度のうちに見出され,また地域集団の体型としてのコミュニティーは具現される」といえよう。

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百科事典マイペディア 「地域社会」の意味・わかりやすい解説

地域社会【ちいきしゃかい】

一定の地域を媒介として結ばれる生活の共同。自然的契機で成立するが,単なる空間的広がりでなく,そこに居住する人びとの社会生活様式,意識などが制度的に構造化されている社会をさす。近代化に伴い自然的特徴が薄れ,規定要因として行政・経済区域の重要性が増している。コミュニティの訳語としても用いられる。
→関連項目CSR無縁社会

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世界大百科事典(旧版)内の地域社会の言及

【社会】より

…狩猟採取社会および園耕社会(初期の原始的な農耕)では部族社会tribal societyがこれに当たり,農業社会では農村共同体rural community,Agrargemeinschaftがこれに当たり,近代国民国家の成立以降では国民社会national societyがこれに当たり,そして現代ではそれがしだいに世界社会world societyに向かって拡大しつつある。
[部分社会]
 (1)地域社会 地縁によって形成される社会,すなわち地理上のテリトリーを共有する人びとから成る社会。マッキーバーがアソシエーションから区別してコミュニティと呼んだものがこれであって,農村と都市がその2大区分をなす。…

※「地域社会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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