改訂新版 世界大百科事典 「地形模型」の意味・わかりやすい解説
地形模型 (ちけいもけい)
relief model
山や谷など地表面の形状を立体のまま縮小して示したもの。立体地図ともいう。ふつうの平面的な地図では,地形は等高線その他の記号で表現されており,正しい読図にはある程度の予備知識と習練とが求められるが,地形模型ではその必要がない。このため学校,博物館,遊園地,観光地その他での教育・展示用などに利用され,あるいは鉄道,道路,ダム等の建設位置選定などの目的で作製されたりすることが多かったが,大縮尺模型では,任意の季節や時刻に対応した方位と角度から光をあてることによって,地表の日なた・日陰の範囲とその変化を知ったり,反対に,地表の特定点からの眺望または直達可能な領域を求めたりすることも容易なので,近年は各種の地域計画に資料として活用される機会がふえた。おもな作成技法は,台板に地表の高さに比例(立体感を誇張するため高さを水平距離の数倍にとることが多い)する長さの釘を多数打ち込み,その間を粘土などで埋める方法,各等高線に従って切り抜いた厚紙を積み重ねる方法などであるが,正確で詳細な地形模型を作るには多大の労力と時間,費用を要し,複製も簡単ではない。学校向けなどの商品は,かつては高価で重く壊れやすいセッコウ製が主流であったが,第2次大戦後は地名・記号その他が印刷着色されたプラスチック模型が金型プレス法で安価に量産されるようになった。各種の縮尺・地域の立体地図が市販されているが,一般家庭への普及率のもっとも高いのは立体地球儀である。
執筆者:佐藤 久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報