塩化ビニリデン(読み)エンカビニリデン(英語表記)vinylidene chloride

デジタル大辞泉 「塩化ビニリデン」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ビニリデン〔エンクワ‐〕【塩化ビニリデン】

塩化ビニル塩素を付加して得られるトリクロロエタンを、水酸化ナトリウムなどを用いた脱塩化水素反応によって作る無色液体。熱・光・触媒などによって重合し、塩化ビニリデン樹脂となる。塩化ビニルアクリロニトリルなどと共重合したものを繊維・食品包装用フィルム・漁網などに使用。化学式CH2=CCl2

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「塩化ビニリデン」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ビニリデンエンクヮ‥【塩化ビニリデン】

  1. 〘 名詞 〙 ( ビニリデンは[英語] vinylidene ) トリクロルエタンの脱塩化水素反応により合成される物質。化学式 C2H2Cl2 不安定で酸素に触れて過酸化物をつくり、光、熱、触媒により重合して塩化ビニリデン樹脂となる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ビニリデン」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニリデン
えんかびにりでん
vinylidene chloride

エチレンの塩素二置換体の一つ。正しくは1,1-ジクロロエテンという。クロロホルムに似たにおいのする揮発性無色液体。

 工業的には、クロロエテン(クロロエチレン、塩化ビニル)への塩素付加または1,2-ジクロロエタンの塩素置換により得られる1,1,2-トリクロロエタンを、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムにより脱塩化水素することにより製造する。きわめて不安定な化合物で、酸素に触れ過酸化物をつくり爆発することがあるので水中や暗所で貯蔵する。光、熱、触媒により重合しやすい。塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどとの共重合体がよく用いられ、合成繊維、商標名サランで知られる、耐薬品性が大きく吸湿性の小さいラップ用食品保存フィルムなどの原料となる。自動車の内装、漁網などにも使われる。蒸気は麻酔作用があり有害である。

[谷利陸平]



塩化ビニリデン(データノート)
えんかびにりでんでーたのーと

塩化ビニリデン
  CH2=CCl2
 分子式 C2H2Cl2
 分子量 96.9
 融点  -122.1℃
 沸点  31.7℃
 比重  1.2129(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.4249

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「塩化ビニリデン」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニリデン (えんかビニリデン)
vinylidene chloride

エチレンの二塩素化物で,同一炭素に2個の塩素原子が結合している。1,1-ジクロロエチレンともいう。化学式CH2=CCl2。融点-122.1℃,沸点31.7℃。塩化ビニルCH2=CHClの塩素化または1,2-ジクロロエタンの塩素化で得られる1,1,2-トリクロロエタンCH2Cl・CHCl2アルカリで脱塩酸することによって製造される。蒸気は麻酔性をもち,有毒。きわめて不安定で,酸素により爆発性の過酸化物を生じ,熱,光,ラジカル重合触媒によって容易に重合するので取扱いには注意を要する。重合防止剤としてフェノール類,アミン類を用いる。おもに塩化ビニルあるいはアクリロニトリルCH2=CHCNとの共重合体が食品包装材料用フィルムや家庭用ラップフィルムなどとしても市販されている。
ポリ塩化ビニリデン
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「塩化ビニリデン」の解説

塩化ビニリデン
エンカビニリデン
vinylidene chloride

1,1-dichloroethene,C2H2Cl2(96.94).CH2=CCl2.塩化ビニルを塩素化した1,1,2-トリクロロエタンの水酸化カルシウムによる脱塩化水素によってつくられる.融点-122.1 ℃,沸点31.7 ℃.1.2129.引火点-10 ℃.きわめて不安定で,酸素と接触すると過酸化物をつくり,光や熱で容易に重合する.塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体の合成に用いられる.加熱や衝撃によって爆発することがあるので水中に保存する.有毒.[CAS 75-35-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化ビニリデン」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニリデン
えんかビニリデン
vinylidene chloride

エチレンの同一炭素原子に結合している2個の水素原子が塩素原子により置換された化合物 CH2=CCl2 のこと。一般に CH2=C< をビニリデン基という。沸点 31.7℃,凝固点-122.5℃。塩化ビニルを塩素化し,CH2Cl-CHCl2 とし,その脱塩化水素反応で得られる。酸素に触れると過酸化物をつくり,熱,光,遊離基などの触媒作用によって重合する。また爆発性があるので,水中に保存する。塩化ビニルとの共重合体は繊維状にして漁網などに,フィルム状にして包装用に,またラテックスはコンクリート養生剤に利用される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「塩化ビニリデン」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニリデン【えんかビニリデン】

化学式はCH2=CCl2。無色の液体。融点−122.1℃,沸点31.7℃。エーテル,アルコールに可溶。工業的にはトリクロロエタンの脱塩化水素によりつくる。塩化ビニリデン樹脂の製造原料として重要。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「塩化ビニリデン」の解説

塩化ビニリデン

 合成樹脂の原料.単品では毒性がある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android