塩生植物(読み)エンセイショクブツ(英語表記)halophyte

デジタル大辞泉 「塩生植物」の意味・読み・例文・類語

えんせい‐しょくぶつ【塩生植物】

海浜植物のように、塩分の多い水に耐える植物。葉は多肉性で、水分多く保つ。アッケシソウハマサジなど。

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精選版 日本国語大辞典 「塩生植物」の意味・読み・例文・類語

えんせい‐しょくぶつ【塩生植物】

  1. 〘 名詞 〙 海浜、岩塩地域などの塩分に富む土壌に生育する植物の総称。一般に多肉性の葉茎をもち、葉は無毛細胞液は高濃度の塩分を含むので浸透圧が高く吸水力も強い。ハマアカザ、アッケシソウなど。

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改訂新版 世界大百科事典 「塩生植物」の意味・わかりやすい解説

塩生植物 (えんせいしょくぶつ)
halophyte

塩類を含んだ土地で生育できる植物。海岸の塩生湿地と内陸の塩生湿地・塩砂漠に生育する高等植物に限る場合と,藻類や高等植物でもアマモ,カワツルモなどの海水・汽水中の沈水植物を含める場合がある。塩害には,塩類を含んだまわりの土壌の高い浸透圧の影響と植物体内での高濃度の塩類による生理的悪影響があり,塩生植物の耐塩性salt toleranceのしくみには次のようないくつかの方法がある。(1)植物体内とくに葉の細胞の液胞に害を受けない形で塩類を集積し,葉の浸透圧を大きくすることによって根からの吸水能力を高める。これはアッケシソウ,シバナ,ウラギクなどの耐塩性の大きい植物にみられる。体内に塩類を集積して害を受けないしくみはよくわかっていない。(2)イソマツ,ギョリュウの仲間,一部のマングローブ植物のように塩類腺をもち,吸収した塩類を排出したり,多肉の塩生植物のように吸収した塩類を膨潤により薄め,体内の塩類濃度があまり高くならないようにする。耐塩性はかなり大きい。(3)塩類とくにカリウムとのカチオンバランスを欠くナトリウムの過剰吸収をしない。この場合には吸水能力はあまり高まらず,耐塩性は大きくない。

 塩生植物は必ずしも好塩性ではなく,種子発芽淡水の方がよく,その後の生長も海水より低い塩類濃度が最適である。海岸の塩生湿地は,温帯以北では草本と藻類からなるが,熱帯亜熱帯ではマングローブ林も発達する。内陸とくに塩砂漠には草本以外に低木が生育する。日本には海岸の塩生湿地のみが存在し,内湾や河口で潮の流れが遅く遠浅の浜で,しかも潮位差が大きくて泥土が沈積するという条件が必要な塩生湿地は,潮位差の小さい日本海側には発達しない。塩生湿地内の塩類濃度,浸水時間の場所による違いに対応して,異なる塩生植物が分布する。ハマボウは塩生湿地に群落をつくる代表的な例である。気根の発達,胎生的な芽生えなどの特徴を示すマングローブ林は西表島ではよく発達し,6種のマングローブ植物が生育するが,日本における分布の北端にあたる鹿児島県揖宿郡喜入町では規模が小さく,マングローブ植物としてはメヒルギただ1種が生育しているのみである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩生植物」の意味・わかりやすい解説

塩生植物
えんせいしょくぶつ

植物体中の塩分濃度を高くして、海水に浸っても生きていける植物。わが国では砂州で囲まれた波の静かな海岸沿いの塩沼地(塩湿地)に生育する。塩沼地だけでなく、干拓地や塩田跡地の塩だまりにもみられる。しかし現在では、このような場所が少なくなっている。アッケシソウ、チシマドジョウツナギ、ウミミドリなどは北海道に、本州各地にはハママツナ、ホソバノハマアカザなどが分布する。また、シチメンソウ(九州北部)、ハマサジ(本州中部以南)、フクド(紀伊半島以西)なども塩生植物の代表的なものである。北海道能取(のとろ)湖畔のアッケシソウの秋の紅葉は美しく、よく知られている。

[小滝一夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩生植物」の意味・わかりやすい解説

塩生植物
えんせいしょくぶつ
halophyte

海水が流れ込むような塩分に富む土地に生える植物。植物体の細胞中にも塩分を含んでいて,塩分の多い土壌からでも水分を吸収できる。普通には海浜,海岸砂丘,内陸塩地に生える陸生の高等植物をさし,アッケシソウ,ハママツナなどの例にみるように,アカザ科のものに多く,一般に多肉である。マングローブの諸種も含められる。そのほかに,海中に生えるアマモ,海藻などを含めていうこともある。

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百科事典マイペディア 「塩生植物」の意味・わかりやすい解説

塩生植物【えんせいしょくぶつ】

塩分の多い場所に生活する植物。海浜,海岸砂丘,内陸の塩地などに見られる。細胞液中に高濃度の塩分を含み,水分に乏しい土壌からも吸水できる。この性質は乾地のものほど著しい。一般に多肉のものが多い。

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