( 1 )[ 一 ]①の例は、ほとんど「古今集」以後の和歌に限られる。歌題としては「古今六帖‐五」の「服飾」にみえるのが古いが、八代集には用例がない。平安朝歌合でも、現在確認できるのは「長久二年権大納言師房歌合」(一〇四一)のみで、この他には「永久百首」の歌題となっているに過ぎない。
( 2 )夏季の冒頭題としては「更衣」が常套だったが、「夏衣」は平安後期に至ってその変形として登場したようである。題意は[ 一 ]①の挙例の躬恒歌のように、夏衣の「うすき」ことを強調したり、[ 二 ]②の挙例の源師賢歌のように、惜春の情を誘発したりするものとして詠まれた。
( 3 )連俳書では、[ 一 ]①の挙例の芭蕉句のようにすべて初夏の季語とし、すがすがしい新鮮さが詠まれる点に主眼が移ってくる。
( 4 )[ 二 ]の枕詞は平安時代以降に登場し、時代が下るに従って、多様なかかり方が現われる。
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