多田等観(読み)ただとうかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「多田等観」の意味・わかりやすい解説

多田等観
ただとうかん
(1890―1967)

チベット入国した仏教学者。秋田市の浄土真宗本願寺派の寺に生まれる。大谷光瑞(おおたにこうずい)法主の命でインドに行き、カリンポンにてダライ・ラマ第13世に拝謁、トゥプテンゲルツェンの法名を授与される。1913年(大正2)9月ブータン経由でチベットの首都ラサに到着、以後10年間セラ学問寺にて僧院生活を送る。1923年帰国。デルゲ版チベット大蔵経をはじめ2万4000部余の貴重なチベット仏教研究文献を請来(しょうらい)した。東大、東北大、慶大、カリフォルニア大講師を歴任。1960年(昭和35)『西蔵撰述(チベットせんじゅつ)仏典目録』を刊行、日本学士院賞を受けた。東洋文庫研究員として後進の育成に尽力し、日本のチベット学の発展に多大の貢献をなした。昭和42年2月18日没。

川崎信定 2017年9月19日]

『『西蔵大蔵経総目録』(1934・東北帝国大学/複製・1970・名著出版)』『多田等観著、牧野文子編『チベット滞在記』(1984/新装版・1999・白水社/講談社学術文庫)』『多田等観著『チベット』(岩波新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「多田等観」の意味・わかりやすい解説

多田等観 (ただとうかん)
生没年:1891-1967(明治24-昭和42)

チベット学者。秋田市土崎港旭町浄土真宗本願寺派西船寺出身。1910年西本願寺に入り,翌年ダライ・ラマ13世の使いとして来日したツァワ・ティトゥルの世話役になり,同使節の帰国に同行し,12年カリンポンで亡命中のダライ・ラマからトゥプテン・ゲルツェンの法名を受けた。翌年夏ブータンを経てラサに至り,セラ寺ラルドン僧房に入り,19年ダライ・ラマから具足戒を受け,ゲシェーの学位を得て24年帰国した。デルゲ版カンギュル4部・テンギュル3部,17種の高僧全集,その他多くの稀覯本(きこうぼん)をもたらし,別にナルタン版1部とラサ版カンギュル1部も将来した。東北大学,東京大学などでチベット語を教え,《チベット大蔵経デルゲ版総目録》(1934),《西蔵撰述仏典目録》(1953)を共編し,《チベット》(1942),《The Thirteenth Dalai lama》(1965)等を著し,日本のチベット学発展の基礎を作った。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多田等観」の意味・わかりやすい解説

多田等観
ただとうかん

[生]1890.7. 秋田
[没]1967.2.18. 東京
ダライ・ラマ 13世 (→トゥプテンギャツォ ) 治下のチベットに留学したチベット仏教学者。大谷光瑞の命を受け,1912年帰国するチベット使節ツワ・ティトゥル師に同行してインドに渡り,青木文教とともにダライ・ラマ 13世に会見。 13年9月,ブータンから単身チベットに入国。ラサ北郊のセラ寺に留学,23年3月帰国。大量のチベット文献を請来した。大蔵経は竜谷,東京,東北などの各大学に,蔵外文献は東北,東京大学に所蔵された。東北,東京大学の講師をつとめ,『西蔵大蔵経総目録』『西蔵撰述仏典目録』の編纂にたずさわり,晩年は東洋文庫チベット学研究センターで研究に従事した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「多田等観」の解説

多田等観 ただ-とうかん

1890-1967 大正-昭和時代の仏教学者。
明治23年7月7日生まれ。インドでダライ=ラマ13世と会見。大正2年チベットのラマ教団にはいり教義を研究。13年おおくの仏教文献をたずさえて帰国した。昭和30年「西蔵(チベツト)撰述仏典目録」(共同研究)で学士院賞。昭和42年2月18日死去。76歳。秋田県出身。著作に「チベット」など。

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世界大百科事典(旧版)内の多田等観の言及

【セラ寺】より

…ツオンカパの名代として明の永楽帝に招かれ,大慈法王の称号を受けたシャキャ・イェシェーShakya ye shes(1354‐1435)が1419年に創建した大僧院,三つの仏教哲学研修学堂と一つの密教実践道場を持ち,ダライ・ラマ2世以来その直轄寺となった。ここには河口慧海,多田等観が留学した。当時の僧数は700人に近かったとされている。…

※「多田等観」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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