末梢の血液に赤血球が増加し,ヘマトクリット値が上昇している状態をいい,赤血球増加症と同じ意味で用いられる。多血症には,全血液中の赤血球数は正常であるが,なんらかの原因で末梢血液で増加する相対的多血症と,総赤血球数が増加する絶対的多血症がある。相対的多血症は,激しい嘔吐や下痢,やけどなどによる脱水や腎臓障害によって体液が失われた結果,見かけ上,赤血球数が増える場合と,本態は不明であるが血液の分布状態に変化が起こって,末梢血液のみに赤血球数が増える場合とがある。後者は,やや肥満して血圧の高い中年の男子で,ストレスの多い状態にあるときによくみられることから,ストレス多血症といわれる。症状としては頭痛やめまいがみられる。絶対的多血症には,赤血球系細胞の異常増殖による真性多血症と,高所滞在や心肺機能の低下,腎臓のエリトロポエチンの産生亢進などによる二次性多血症がある。高所滞在など酸素分圧の低いところで起こる場合は生理的な代償作用なので,普通の状態に戻ればほどなく正常となるが,その他の例では頭痛,赤ら顔,循環障害,出血,血栓などがみられる。
→血液 →血球
執筆者:菊池 祥之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…最も多い原因はヘモグロビンの原料となる鉄分が不足するもので,月経過多,痔や胃潰瘍などによる長期に及ぶ出血が先行していることが多い。貧血に対して赤血球数が増加する病気を赤血球増加症(多血症)といい,腫瘍性増殖によるものと,心臓や肺疾患のために生ずる続発性のものがある。(2)白血球の異常による病気 癌のように白血球が無秩序に増殖し,そのため役にたつ正常の白血球や赤血球,血小板の産生が妨げられるのが白血病である。…
※「多血症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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