大話(読み)オオバナシ

デジタル大辞泉 「大話」の意味・読み・例文・類語

おお‐ばなし〔おほ‐〕【大話】

盛んに話し込むこと。長話をすること。また、その話。
「ちとお上さい。今―があるところです」〈左千夫・隣の嫁〉
民間説話一種空想的な誇張を次々と展開させる類のもの。特に、聞いてみんなが大笑いするような、男女間の秘事題材にした話。

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精選版 日本国語大辞典 「大話」の意味・読み・例文・類語

おお‐ばなしおほ‥【大話】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 盛んに話しこむこと。長話をすること。また、その話。
    1. [初出の実例]「部屋へいったら文魚殿が来て居て大ばなしさ」(出典:洒落本・二日酔巵觶(1784))
  3. 大げさな内容笑話。とくに男女のみだらな話を大げさに語りあって大笑いするもの。
    1. [初出の実例]「寒国(かんこく)の大咄の事」(出典咄本・軽口大わらひ(1680)三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大話」の意味・わかりやすい解説

大話
おおばなし

昔話途方もない空想的な誇張を主題にした一群の笑話。嘘話(うそばなし)で、空想的な事柄を、現実感豊かに表現するところに話の興味がある。「鴨(かも)取り権兵衛(ごんべえ)」はその典型的な例である。猟師が鴨をとりに池に行く。1発で鴨が3羽とれ、その流れ弾が、やぶにいた狐(きつね)に当たる。狐は苦しがって土をかき、長芋(ながいも)を25本掘る。池に入ると、もんぺの中にエビが5升も入る。池から上がろうとすると、腰にぶら下げた鴨が羽ばたいて猟師は空に舞い上がり、京の五重塔の上に落とされる。屋根の上から下を眺めていると、上方(かみがた)見物にきた同郷人が下から声をかける。男は、京の高見の見物にきたと答える。空想の連鎖譚(たん)で、その内容にはさまざまな変化がある。江戸時代から人気のある笑話であり、江戸前期の赤本『ただとる山のほととぎす』や、黄表紙の『虚言(うそ)八百万八伝』(1779)や『啌多雁取帳(うそしっかりがんとりちょう)』(1783)などにもとられ、漢文小咄(こばなし)集『奇談一笑』(1768)にもみえている。このほか「源五郎の天昇り」など、いくつかの嘘話が知られているが、語りの形式に主眼を置く早(はや)物語には、「テンポ(嘘)語り」といって、奇想天外なことを次々と展開させていく語物がいろいろある。嘘話は古くは『今昔物語集』にもある。川が洪水のとき屋根裏に逃げる。屋根ごと流されるが、炊事の火で燃え上がり、皆焼け死ぬ。1人だけ水に飛び込んで逃げ、水面に出ている木につかまる。水が引くと、山の上から深い谷の上に生えている木の上にいる。網をたくさん集めて張った上に飛び降りて助かる。ヨーロッパにも嘘話は発達しており、やはり狩猟に関するものが目立つ。嘘話の集成として有名なドイツの『ミュンヒハウゼン男爵の冒険』(1786)にも、日本の嘘話と共通するものが少なくない。

[小島瓔

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