天王信仰(読み)てんのうしんこう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

天王信仰
てんのうしんこう

疫病よけを中心とした牛頭天王 (ごずてんのう) に対する信仰。牛頭天王は仏教の守護神であるが,『備後国風土記』では武塔天神またはスサノオノミコトに擬している。平安京八坂の祇園社の近くに祀られていたのが,御霊信仰 (ごりょうしんこう) と習合して疫病よけで知られるようになった (→祇園信仰 ) 。当時平安京には疫病が流行し,御霊会 (ごりょうえ) が行われた。『備後国風土記』には蘇民将来 (そみんしょうらい) 伝説が載せられており,そこで牛頭天王が疫病を駆逐できる力をもつと語られていることから,疫病をもたらす悪霊を追放する霊験があると信じられた。毎年6月 (現在は7月 17日) の疫病流行期,害虫発生期に天王祭が行われるのもその霊験による。特に疫病を水辺に追放することから水神の性格も認められている。関東・東海地方の天王祭は水神祭とみなされており,愛知県尾張地方の津島天王の信仰圏にある (→津島神社 ) 。これらは京都祇園の天王信仰と違って沿岸部に発達しており,天王と水神が習合したことを示している。

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百科事典マイペディアの解説

天王信仰【てんのうしんこう】

牛頭(ごず)天王および素戔嗚(すさのお)尊に対する信仰。古くは仏教の守護神たる四天王に対する信仰であったが,現在は牛頭天王に対する信仰をさす。牛頭天王はインドで吉祥国の王とされ,祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の守護神と説かれるので,京都の八坂神社(祇園社)の祭神素戔嗚尊と習合し,播磨(はりま)の広峰神社,愛知の津島神社とともに天王信仰の中心となった。牛頭天王は本来疫病よけの神で,祇園の御霊会(ごりょうえ),津島の天王祭などは夏の疫病流行期に行われる。全国に分祀があり,天王様とも呼ばれ,蘇民(そみん)将来の護符などを出すところが多い。
→関連項目水神

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世界大百科事典 第2版の解説

てんのうしんこう【天王信仰】

牛頭天王(こずてんのう)に対する信仰。《簠簋(ほき)内伝》によると天界にあった天刑星が,地上に降りて,牛頭天王と名のり,南海に赴く。途中,巨旦(こたん)大王に宿を求め,断られるが,貧しい蘇民将来(そみんしようらい)の宿で丁重にもてなされる。牛頭天王は,やがて南海の竜王の娘頗梨采女(はりさいによ)を妻にもらい,8人の王子が誕生する。これら眷族(けんぞく)をひきいた牛頭天王は,ふたたび帰還するがその途中で巨旦を滅ぼし,蘇民将来に一国を与えたという。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

天王信仰
てんのうしんこう

牛頭(ごず)天王に対する信仰。祇園(ぎおん)信仰ともいう。旧暦6月のころは流行病や食中毒の多い時期で、それらを牛頭天王の威力によって退散させ、穢(けがれ)を水に流すための法要や祭りが行われたが、悪疫の原因を御霊(ごりょう)のしわざと考え、御霊信仰と習合する。
 農村においても旧6月のころは、稲の病虫害に悩まされる時期で、これをやはり御霊のしわざと考え、御霊信仰を媒介として天王信仰は広く農村にも広がる。天王信仰にかかわる祭礼は、祇園祭、天王祭、津島祭、川裾(かわすそ)祭などとよばれ、山車(だし)や屋台を繰り出し風流(ふりゅう)・練り物の華やかな夏祭を形成するに至った。[井之口章次]

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