夏に行う祭礼行事の総称。おもに田植,祓(はらい),御霊(ごりよう),虫送りなどの祭りがある。陰暦で4,5,6月だが,一般に陽暦5月上旬の立夏から8月上旬の立秋までの祭礼をいう。平安時代に京都では陰暦4月中の酉(とり)の日(現在5月15日)に行われた賀茂神社の葵祭(あおいまつり)が盛んで,これを〈まつり〉と呼び,やがて〈まつり〉は夏祭の総称となり,俳諧で夏の季語にまでなった。869年(貞観11)に始まったという京都祇園祭(ぎおんまつり)は疫病流行を御霊のたたりとみてこれを神泉苑(しんせんえん)に鎮送する形式だったが,やはり神輿(みこし)洗いや山鉾(やまぼこ)巡幸などの神幸祭に,祓や御霊,虫送りに通じる主旨がある。三重の伊雑宮(いぞうぐう),大阪の住吉大社など実際に水田で田植を行う田植神事があり,京都の賀茂御祖(かもみおや)神社,東京府中の大国魂(おおくにたま)神社など多くの神社での夏越の祓(なごしのはらい)や,虫送り,神輿洗い,浜降り(はまおり)行事など夏祭には疫霊(えきれい)や罪穢(つみけがれ)を流し去る水辺の行事が多い。
→御霊会(ごりょうえ)
執筆者:薗田 稔
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