改訂新版 世界大百科事典 「太上感応篇」の意味・わかりやすい解説
太上感応篇 (たいじょうかんのうへん)
Tài shàng gǎn yìng piān
中国の善書(勧善の書)で,もっとも初期の,かつもっとも著名なもの。南宋(1127-1279)の初め,李昌齢によって作られた。人の寿命・禍福は,その人の行為のいかんによって定められるとする勧善懲悪の書であるが,宿命論的な因果応報説とは異なる。人の行為は,北斗星,三尸(さんし)神,竈(そう)神などの司命神によって日夜監視され,すべて天に報告される。その報告記録にもとづいて,天が寿命・禍福を決定したり変更したりすると説く。このような考え方はつとに晋の葛洪(かつこう)の《抱朴子》に見えるが,《抱朴子》は仙人志向の書であり,本書は一般民衆の日常生活の中で説かれていて,立場が異なる。本書で勧戒された行為は,通俗的な日常の倫理道徳に属するものである。1100余字の小さなものであるが,後世に与えた影響は大きかった。
→功過格
執筆者:小川 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報