石原慎太郎の中編小説。1955年(昭和30)7月『文学界』に発表。同年秋、第1回文学界新人賞受賞。56年1月、第34回芥川(あくたがわ)賞受賞。同年3月新潮社刊。肉体的な行動のみを信じている拳闘(けんとう)部の学生津川龍哉(たつや)と、背伸びしたブルジョア娘の英子(えいこ)との遊戯的な性愛の交換風景を描きながら、そこに若者たちの意外に健康で必死な愛の形を追究してみせた作品。陰茎で障子紙を破る描写が爆発的な評判となり、作者が無名の学生作家であったという事情も手伝って、文学的・倫理的価値をめぐる論争が華々しく展開し、「太陽族」という新風俗まで生み出した。この衝撃的な素材は武田泰淳(たいじゅん)の先行の作品『異形(いぎょう)の者』にヒントを得たものである。『太陽の季節』の意義はむしろ、戦後10年、ようやく平和にも慣れ、消費生活の向上とともに戦後変革の夢を見喪(みうしな)って鬱屈(うっくつ)していた当時の人々に、若い新世代の反逆的な心情と遊戯的な性意識を正面から突きつけて、「もはや戦後ではない」昭和30年代の到来をいやおうなく自覚させた点にあるとみるべきだろう。
[古林 尚]
『『太陽の季節』(新潮文庫)』
石原慎太郎(1932- )の短編小説。第1回の文学界新人賞受賞作品として,《文学界》1955年7月号に掲載され,同年下半期の芥川賞(第34回)を受けた。ボクシング部に所属する高校生津川竜哉が,銀座で英子という娘と知り合い,残忍なやり方で〈愛して〉いくようすが描かれる。この小説は文壇的には不評だったが,翌年映画化され,その後石原の《処刑の部屋》《狂った果実》(ともに1956)なども映画化されて大ヒットし,〈太陽族〉という流行語が生まれたのちには,〈太陽族もの〉の元祖として広く読まれるようになった。いわばこの作品は,活字メディアではなく映像メディアによって作家が有名になる最初のケースを作ったわけである。
執筆者:柘植 光彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…芥川賞受賞者の松本清張,五味康祐,宇能鴻一郎らのその後の活動をみてもそのことが言える。社会的に大きな影響力を持ったのは石原慎太郎の《太陽の季節》の受賞(1955年下期)で,賛否両論の対立が激しかったが,太陽族と称される世相・風俗を流行させる一因ともなった。総じて多くの新人賞を輩出させる刺激となっている。…
※「太陽の季節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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