使用者は,生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは,その者を生理日に就業させてはならない(労働基準法68条)。生理休暇は,女性労働者の労働条件,作業環境,生活条件などが劣悪な時代に,就労によって生理時の母体に負担をかけ母体機能を悪化させてはならないという配慮を背景に,戦前からの運動のなかから生まれでた制度である。そのため,ある時期以降は,女性の労働条件が改善されたとして,本規定の廃止を主張する論議がみられるようになった。しかし,1985年の労働基準法改正によって,以前には存在した〈生理に有害な業務〉に従事する女性が休暇を請求したとき,という要件は削除されたものの,本規定そのものは残されて,現在に至っている。いまだに高温多湿など劣悪な労働環境の職場が存在すること,生理時の休憩設備,健康管理体制が不備な職場もあること,さらに通勤事情や家事労働負担などを考慮して,現時点での生理休暇廃止論にはまだ反対する声が強い。インドネシア,韓国など二,三の国を除いて,諸外国には生理休暇という制度はない。しかし,諸外国の実情をみると,就労条件が日本に比較して格段に良好であったり,疾病休暇等を生理休暇として援用している例も多い。なお,生理休暇を取得したことを理由として,精皆勤手当や一時金を減額したり,昇格時に差別したりすることはゆるされていない。
執筆者:浅倉 むつ子
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婦人労働者の健康と母性保護のための制度で、婦人労働者が生理のときに使用者に請求する休暇のことである。労働基準法(昭和22年法律49号)第68条は「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女子が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」旨を定めている。これに違反した使用者は罰金を科せられる(120条)。生理休暇については、労働者側は、生理時には通常の場合と異なって疲労度が著しく高くなること、また、母性保護上も生理休暇は重要であると主張してきたが、企業の側は、生理休暇は医学的に根拠はなく、かえって婦人の平等雇用を妨げているとして、その廃止を強く要求してきた。このような両者の対立の結果、男女雇用機会均等法の成立(1985)に伴う労働基準法の改正によって、旧法第67条(現68条)の「又は生理に有害な業務に従事する女子」という文言が削除され、その規定が一部緩和された。
[湯浅良雄]
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…しかし,産後6週間を経過した女性が請求すれば,医師が支障がないと認めた業務に就かせることができる。次に,生理休暇制度があるが,これは生理日の就業が著しく困難な女性が請求した場合に,その者を就業させることが禁止されている。この制度自体は世界的に見ても取り入れられている国は少ない。…
※「生理休暇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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