女房奉書(読み)ニョウボウホウショ

デジタル大辞泉 「女房奉書」の意味・読み・例文・類語

にょうぼう‐ほうしょ〔ニヨウバウ‐〕【女房奉書】

天皇側近女房が天皇の意思を奉じて発給した仮名書き文書。ふつう、散らし書きで書かれる。鎌倉時代からみられ、室町後期には勅命を伝える文書の主流となった。

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精選版 日本国語大辞典 「女房奉書」の意味・読み・例文・類語

にょうぼう‐ほうしょニョウバウ‥【女房奉書】

  1. 〘 名詞 〙 古文書の様式の一つ。天皇に近侍する女官が天皇の意思を奉じて発給した仮名書きの文書。また、後には勅筆のものもあった。普通、散書(ちらしがき)で書かれる。鎌倉時代からみることができる。
    1. [初出の実例]「女房奉書加一見返献候」(出典:園太暦‐貞和二年(1346)正月一六日)

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改訂新版 世界大百科事典 「女房奉書」の意味・わかりやすい解説

女房奉書 (にょうぼうほうしょ)

室町・戦国時代に盛んに使用された,天皇・上皇仰せを側近の女房が奉じた仮名奉書。とくに天皇の女房奉書は勾当内侍(こうとうのないし)が奉ずる。鎌倉中期以降の公家政治は,院政にあっては伝奏(てんそう)が,親政にあっても鎌倉末までには伝奏が置かれ,政務を執る院や天皇の奏聞・伝宣の役を担っていた。伝奏は本来直接仙洞や内裏に参入して事にあたったが,ときおり不参のときには側近の女房の奉書をもって伝奏に仰せを伝えさせたのである。室町・戦国期には伝奏が室町殿(足利将軍)の下に掌握されることとなったが,天皇がその伝奏を動かす手段として盛んに女房奉書を使用した。伝奏は事の内容に応じて,この女房奉書を当事者に与える(伝奏奉書を添えて)ことがあったが,その際,女房奉書の端裏ないし奥に〈仰 年月日〉と伝奏が銘を書くのである。また女房奉書が伝奏を経ず,直接当事者に与えられることもあり,その場合には銘は記されない。さらに,戦国・江戸期には,女房奉書の形をとりながら,天皇の宸筆(しんぴつ)であるものも少なくない。様式的特徴は,仮名の散し書きで,雁行の形をとるのが多い。差出書,宛名日付がなく,切封のうえに上書を書くのみである。本文和文体で〈申とて候,かしく〉で結ばれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「女房奉書」の意味・わかりやすい解説

女房奉書
にょうぼうほうしょ

女官(内侍(ないし))が天皇・上皇の命令を伝えるため発行した文書。鎌倉時代に始まり、室町時代のものが数多く残っている。仮名交じり散らし書きにし、年月日を書かないが、命令を受けた公卿(くぎょう)(上卿(しょうけい))が端裏(はしうら)に「仰(おおせ)」と書き年月日を記したものもある。女房奉書には天皇直筆のものがあるが、この場合にも女房が勅命を受けて出す奉書の形式で書かれている。女房奉書は蔵人(くろうど)が出す綸旨(りんじ)と並び天皇の意志を伝達するための主要な文書であった。天皇・上皇の意を受けた女房奉書のほかに、親王家の女房が発行したものや、江戸時代、幕府の女房が出した奉書などもある。

[百瀬今朝雄]

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百科事典マイペディア 「女房奉書」の意味・わかりやすい解説

女房奉書【にょうぼうほうしょ】

天皇や上皇・法皇の命を伝えるため側近の女房が女消息体で書いて出した文書。仮名交りの散らし書きで,年月日は記さない。鎌倉時代に始まり,室町時代ころには綸旨(りんじ)とともに勅旨を伝える文書として重きをなした。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女房奉書」の意味・わかりやすい解説

女房奉書
にょうぼうほうしょ

天皇に近侍する勾当内侍 (こうとうのないし) などの女房が,勅旨を奉じて,全文ひらがなの女子消息体の散らし書きで出した文書。鎌倉時代中頃に始り,室町時代に盛行して綸旨 (りんじ) とともに重要となった。綸旨よりも個人的性格の強いもので,形式も雁が飛ぶような雁行様という方式が定まった。女房奉書の形式によっては,天皇みずから執筆した場合もあった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「女房奉書」の解説

女房奉書
にょうぼうほうしょ

奉書形式の文書の一つ
竪紙または折紙に,天皇側近の女房が天皇の勅旨を奉じて,仮名書き・女消息文体でつくる。書き方は雁行 (がんこう) ・散らし書き。鎌倉時代に始まり,室町時代に最も権威をもち明治初期まで使用された。

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