子方(読み)こかた

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

子方
こかた

能において子供の演じる。本来子供の役であるもの (『三井寺』の稚児,『富士太鼓』の娘など) と,おとなの役であるべきものを子供に演じさせるもの (『安宅』や『船弁慶』の義経,『花筐』の天皇,『正尊』の静役など) とがある。後者の場合は,シテの演技に重点をおく芸術的遠近法の演出であり,また貴人品位を子供の無邪気さで代替させる演出でもある。一つに室町時代の稚児趣味の現れともいう。女性役,鶴亀の役などにも直面 (ひためん) でつとめる。狂言の場合は少年の役のほかに,面を着けた馬や猿などの動物の役がある。

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デジタル大辞泉の解説

こ‐かた【子方】

親方に従属して、その支配・保護・指導を受けるもの。子分。⇔親方
能で、少年の演じる役。また、その少年。子供の役をそのまま演じる場合と、大人の役を演じる場合とがある。

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百科事典マイペディアの解説

子方【こかた】

能において少年の演ずる役。シテ方から出る。子どもの役に扮(ふん)する場合と,《安宅(あたか)》の義経のように,大人(おとな)であるべき役を特に少年に演じさせた場合があり,これはシテをクローズアップするための手法。また室町時代の稚児(ちご)愛好趣味によるともいう。狂言にも子方の出るものが少数ある。

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世界大百科事典 第2版の解説

こかた【子方】

能の役種。少年の演者が扮する役。シテ方から出る。2種類あり,第1は《善知鳥(うとう)》の千代童,《烏帽子折》や《鞍馬天狗》の牛若丸,《関寺小町》の稚児など作中人物が本来少年である場合で,映画・演劇の子役と同じ。第2は,《安宅》や《船弁慶》の義経,《花筐(はながたみ)》や《草子洗》の天皇,《大仏供養》の頼朝,《正尊》の静御前など作中人物としては成人である役をとくに少年が扮する場合で,能固有の演出法である。

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大辞林 第三版の解説

こかた【子方】

親方のもとで保護・監督されるもの。封建社会においては親方の支配のもとにある者。農家の雇い人、小作人・名子・網子・奉公人など。子分。 ⇔ 親方
能で、子供の役者。子供の役を演じるほか、「船弁慶」の義経のように大人の役でも子方に演じさせる曲がある。

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精選版 日本国語大辞典の解説

こ‐かた【子方】

〘名〙
① 子である者。子にあたる者。子ども分。
※わらんべ草(1660)五「今の次良太夫、おうぢの子かたになりて、名字をもらふ」
② (「こがた」とも) 親方に従属する者。子分。手下。
※随筆・孔雀楼筆記(1768)一「一族の内にて親方分なるをも、貧弱なるをば、勢ある子方の者、家来の如くあしらひ」
③ 能楽で、少年の演ずる役。子どもの役そのままの場合と、本来おとなであるべき役の場合とがある。前者には「望月」の花若(はなわか)、後者には「船弁慶」の義経などがある。
④ 農村、山村、漁村などで、多くは身分的な関係である親方子方制度に従って、親方に雇われた労働者。子分。⇔親方
⑤ 「こかたや(子方屋)」の略。
※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)六月二六日「此茂左衛門は、ふしみの長崎や小かた之由申候」

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世界大百科事典内の子方の言及

【能】より

…その他,鬼退治物の《紅葉狩》《羅生門》,天狗物の《鞍馬天狗》,祝言物の《石橋(しやつきよう)》《猩々(しようじよう)》などである。
【役籍】
 能は,役に扮して舞台に立つ立方(たちかた)と,もっぱら音楽を受け持つ地謡方(じうたいかた),囃子方とで成り立つが,それぞれの中で技法がさらに分化し,室町時代末期に七つの専門が確立した。立方を勤めるシテ方,ワキ方,狂言方と,囃子方である笛方,小鼓方,大鼓方,太鼓方の7役籍がそれで,江戸時代以降,互いに他の専門を侵さない規律ができ,現在でもそれが守られている。…

※「子方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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