能の役種。少年の演者が扮する役。シテ方から出る。2種類あり,第1は《善知鳥(うとう)》の千代童,《烏帽子折》や《鞍馬天狗》の牛若丸,《関寺小町》の稚児など作中人物が本来少年である場合で,映画・演劇の子役と同じ。第2は,《安宅》や《船弁慶》の義経,《花筐(はながたみ)》や《草子洗》の天皇,《大仏供養》の頼朝,《正尊》の静御前など作中人物としては成人である役をとくに少年が扮する場合で,能固有の演出法である。これは,相対的にシテに焦点を合わせるための手法であるとも,室町期の美少年愛好趣味のあらわれであるともみられる。なお,《鶴亀》の鶴と亀のような超現実的な役もあるが,いずれの場合にも子方は面をつけない。現行曲のうち約60番の能(約25%)に子方が登場する。狂言でも子方を使うが,能のように本来大人である役に出ることはなく,《柑子俵》《金津》《牛盗人》などの子,《靱猿》の猿,《禰宜山伏》の大黒などを演ずる役を子方といい,動物や神仏の役は面をつける。
執筆者:羽田 昶
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…親方・子方と同義。今日ではヤクザや政界の派閥など闇の世界のそれに限られたもののように連想されがちであるが,この民俗語は社会学,民俗学,社会人類学では日本社会の構造を解明するうえで重要な術語のひとつになっている。…
…その他,鬼退治物の《紅葉狩》《羅生門》,天狗物の《鞍馬天狗》,祝言物の《石橋(しやつきよう)》《猩々(しようじよう)》などである。
【役籍】
能は,役に扮して舞台に立つ立方(たちかた)と,もっぱら音楽を受け持つ地謡方(じうたいかた),囃子方とで成り立つが,それぞれの中で技法がさらに分化し,室町時代末期に七つの専門が確立した。立方を勤めるシテ方,ワキ方,狂言方と,囃子方である笛方,小鼓方,大鼓方,太鼓方の7役籍がそれで,江戸時代以降,互いに他の専門を侵さない規律ができ,現在でもそれが守られている。…
※「子方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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