花筐(読み)ハナガタミ

デジタル大辞泉 「花筐」の意味・読み・例文・類語

はながたみ【花筐】[謡曲]

謡曲四番目物世阿弥作。日本書紀などに取材越前国にいた大迹辺おおあとべ皇子(のちの継体天皇)は即位のため、照日の前に形見花筐を贈って上京する。照日の前は物狂いとなって都へ行き、行幸行列の前に出て天皇と再会する。

はな‐がたみ【花×筐】

[名]花や若菜などを摘んで入れるかご。花かご。はなこ。
[枕]編み目が細かいところから、「めならぶ」に掛かる。
「―めならぶ人のあまたあれば」〈古今・恋五〉

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精選版 日本国語大辞典 「花筐」の意味・読み・例文・類語

はな‐がたみ【花筐】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 花などを摘んで入れるかご。花籠。
      1. [初出の実例]「花がたみ臂(ひぢ)にかけ岩つつじ取り具して」(出典平家物語(13C前)灌頂)
    2. 香木の名。分類は新伽羅(きゃら)。香味は甘苦辛。六十一種名香の一つ。〔名香合(1502)〕
    3. 植物「みみかきぐさ(耳掻草)」の異名
  2. [ 2 ] 謡曲。四番目物。各流。世阿彌作。越前国味真野(あじまの)に在住していた大迹辺皇子(おおあとべのおうじ)皇位継承のため上洛することとなり、そば近く寵愛していた照日の前に別れの文と花筐を残して去る。皇子はのちに継体天皇となる。ある日天皇は紅葉狩の行幸の場に狂女を見つけ、持っていた花筐から、その狂女が自分を慕うあまり心乱れた照日の前だと知り、伴って都に帰る。
  3. [ 3 ] [ 一 ]の編目が細かいところから、「めならぶ」にかかる。
    1. [初出の実例]「花がたみめならぶ人のあまたあれば忘られぬらん数ならぬ身は〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋五・七五四)

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改訂新版 世界大百科事典 「花筐」の意味・わかりやすい解説

花筐 (はながたみ)

能の曲名。四番目物。狂女物。世阿弥作だが,クセは観阿弥作曲の《李夫人の曲舞(くせまい)》。シテは照日前(てるひのまえ)(狂女)。越前の味真野(あじまの)に住む照日前(前ジテ)のもとへ,大迹部(おおあとべ)皇子の使(ワキヅレ)が来て,皇子の文と花籠を届ける。皇子は皇位の継承者に決まって都に向かったのである。即位をして大和の玉穂の宮を皇居と定めた継体天皇(子方)は,警護の官人(ワキ)たちに守られて紅葉の御遊(ぎよゆう)に出かける。その道筋に,侍女ツレ)に花籠を持たせた狂女(後ジテ)が来かかる(〈カケリ等〉)。見苦しいと言って官人が籠を打ち落とすと,狂女はこれは君の形見だと敬い,越前での皇子の日常を物語って懐かしがる(〈クルイ〉)。狂女はさらに漢の武帝と李夫人のこまやかな情愛を描いた曲舞を舞って見せる(〈クセ〉)。やがて天皇がそれと気づき,正気に戻った照日前を伴って皇居に帰るのだった。供を連れての物狂いは,現行演目ではこの曲だけである。クセは既成の曲舞をそのまま取りこんだため,前後と異質な堅い色彩となっているが,それが独自性を強め,結果的に成功している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花筐」の意味・わかりやすい解説

花筐
はながたみ

能の曲目。四番目物、狂女物の大作。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)作。『日本書紀』に材をとる。越前(えちぜん)に住む大迹辺皇子(おおあとべのおうじ)(後の継体(けいたい)天皇)の愛人照日前(てるひのまえ)(前シテ)は、即位のため都に上る皇子から手紙と形見の花籠(はなかご)を贈られて悲しむ。侍女(ツレ)を伴い、狂女の姿となった照日(後シテ)は都に上り、天皇(子方)の紅葉の行幸の行列を遮り、中国の皇帝の愛の物語(李夫人(りふじん)の曲舞(くせまい)。観阿弥(かんあみ)作曲)を舞って、天皇との縁を取り戻し、伴われてともに都に帰る。観世流には、のちに彼女が女御(にょうご)となる結末が語られる「安閑留(あんかんどめ)(女御留)」という演出があるが、これが原作という。

[増田正造]

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デジタル大辞泉プラス 「花筐」の解説

花筐/HANAGATAMI

2017年の日本映画。監督:大林宣彦、脚本:大林宣彦・桂千穂、原作:檀一雄の小説。出演:窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、常盤貴子ほか。第72回毎日映画コンクール日本映画大賞受賞。

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普及版 字通 「花筐」の読み・字形・画数・意味

【花筐】かきよう

花かご。

字通「花」の項目を見る

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